<漢検協会>理事長姿見せず、コメント3行…文科省指導で
2009年3月10日21時2分配信 毎日新聞
文部科学省から10日、抜本的な運営見直しを求められた日本漢字能力検定協会。京都市下京区にある協会本部は、詰めかけた報道陣にコメントを紙で配布しただけ。受検者270万人の「マンモス検定」は今後、どうなるのか。検定を活用している学校や漢検取得者の間に、戸惑いや怒りが広がった。【木下武、広瀬登、三木陽介】
■協会は
協会本部はこの日、約20人の報道陣に「誠意を持って対応していく」など3行のコメントを書いた紙1枚を配布。女性広報担当者が「このコメントがすべて。今後お伝えすることがあればホームページで」と話した。
今後の対応などについて、大久保昇理事長(73)ら協会トップによる説明を求められても「理事長と副理事長はこのビルにはいない」「理事長と連絡を取れる上司は出張中」「私には分からない」と繰り返すだけだった。
■大学、高校は
09年度、漢検取得を評価基準の一つにしている大学や短大は全国で490校。京都の立命館大などは「特に見直しなどは検討していない」としているが、ユニーク選抜で点数加算している大阪市立大経済学部は「受験にかかわる問題なので」と回答を避けた。
2級以上に合格すると国語の2単位として認定する千葉県の公立高の教頭は「今のところ見直す予定はないが、漢検の社会的信用や価値が下がってくればどうなるか分からない」。漢検に合格すれば推薦入試に出願できる栃木県のある高校の入試担当者は「検定そのものに不正があったわけじゃないし、今までの実績もあるので」と困惑。同様の北海道の私立高の担当者も「事態の推移を見て判断するしかない」とする。
■受検者の側は
子供3人が漢検を取得している大津市の主婦(52)は「勉強の励みになり、キャリアにもなると思って勧めていた。一体受検料を何に使っていたのか。いかがわしい感じがする」とまゆをひそめた。
準2級を取得している同志社大社会学部3年の男子学生(21)は「特に資格を持っていないので、就職活動のエントリーシートには仕方なく『漢字検定』と書いている。それほどもうかる事業とは思いもしなかった。完全に営利企業ですね」と驚いていた。
◇漢字検定と協会を巡る動き◇
71年 大手家電メーカーを退社した大久保昇氏が不動産会社「オーク」を設立
75年 オークの事業として任意団体「日本漢字能力検定協会」を設立し第1回試験90年 年間受検者が10万人を超える
97年 年間受検者100万人を突破
02年 年間受検者200万人を突破
03年 文科省が実地検査。04、06、08年にも実施し「もうけすぎ」を指摘
06年 収支均衡対策を兼ね漢検9、10級新設
07年 1級と準1級の受検料を値下げ
09年 文科省が異例の5度目の実地検査