県教委の教員採用汚職:地裁判決 「判決、直視を」 富松被告に怒りの傍聴席 /大分

県教委の教員採用汚職:地裁判決 「判決、直視を」 富松被告に怒りの傍聴席 /大分
2009年3月28日16時2分配信 毎日新聞

 27日、大分地裁で言い渡しのあった県教委の昇進人事を巡る汚職事件の判決。6人が逮捕・起訴され、2人が在宅起訴された一連の事件の地裁での公判はこれですべて終わった。事件の象徴ともいえる教育審議監、富松哲博被告(60)と、一連の事件にすべてかかわった元参事、矢野哲郎被告(53)とあって、傍聴席はほぼ満席となり関心の高さをうかがわせた。【古田健治、深津誠】
 富松被告の判決は午前、矢野被告と妻で元佐伯市立小教頭、かおる被告(51)の判決は午後、言い渡された。
 懲役10月・執行猶予3年を言い渡された富松被告の判決を傍聴した大分市の主婦(51)は「判決の重さについては分からないが、教育界で日常的に金品がやりとりされていたということを指摘した。要職に就いているという自覚があったのかなと疑う」。富松被告が判決を目をつぶって聴いていたことについて「判決でも『自己保身』と指摘されていたが、認めたくなかったということなんでしょうか。目を開いて、直視してほしかった」と話した。
 同じく傍聴した同市の無職、安東信二さん(70)は「(少額などから)有罪は気の毒」とする一方、「一連の裁判で、採用試験で点数改ざんが行われた責任や、それに至った口利きの実態が明らかになっておらず不満だ」と話した。
 県教委は再発防止のための採用試験改革などをしたが、過去5年間教員採用試験を受け続けた臨時講師の女性(26)は「(富松被告の)有罪判決は当然。しかし、県教委が再調査をしないままでは、信用して下さいと言われても難しい」と憤る。
 一方、矢野かおる被告の有罪判決について、佐伯市教委は「今回の事件が教育行政に与えた影響は甚大で、この判決は妥当なものである」と教育長名でコメントを発表した。
 ◇無罪でも免職、給与返還なし−−県教委、やっと処分
 27日の判決と同時に行われた臨時県教育委員会で、富松哲博・教育審議監(60)の懲戒免職が決まった。一連の事件では、否認していた富松被告だけが起訴休職になり、約半年間、給与の6割が払われた。給与は返還規定がないが、退職金は支払われない。
 会見した麻生益直教育委員長と小矢文則教育長によると、懲戒免職の理由は「商品券20万円分の受け取りを認めていること」。わいろ性の有無は関係なく、上級審で無罪判決が出ても免職は見直さないという。
 他に起訴された8人(在宅含む)は全員、事実関係を認めていたため、起訴後に懲戒免職。富松審議監だけ遅らせる理由の一つに県教委は、02年4月に県立芸術文化短大の40代の助教授(当時)が起こした強制わいせつ致傷事件を挙げていた。
 この事件は助教授が否認したため、「無罪の可能性があれば処分できない」と有罪判決が確定する見通しとなった04年1月に懲戒免職。県教委は「事例によって対応が分かれるのはよくないし、審議監の言い分が聞けていない」としていた。
 県教委は富松審議監に2度接見を求めたが応じてもらえず、保釈後の2月には出勤命令を出した。弁護士から「体調不良で応じられない」と連絡があり、同19日付で「本人の主張は冒頭陳述と供述調書通り」として書面が送られてきたという。
 更に1カ月以上たっての処分について、小矢教育長は「判決までを見て人事異動関連の受け取りと判断した。事実関係に万全を期した」と述べた。【梅山崇】

3月28日朝刊

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