想定外、突然の幕引き 京教大集団暴行 起訴猶予へ
2009年6月23日9時39分配信 京都新聞
示談成立による告訴取り消しで、京都教育大生6人による集団準女性暴行容疑事件は22日、突然に終結した。京都地検は「大学内での解決はあり得ず、強制捜査で決着が付いた」と説明する。6人の弁護人は「犯罪を疑う見方はまったく間違い」と捜査を批判していたが、示談成立の理由については口をつぐむ。6人は刑事罰に問われない見通しだが、専門家は集団心理の危険性を指摘し、女子大生のケアを訴える。
京都府警によると、女子大生は事件当夜、少なくとも十数杯のビールを飲んでいた。府警は「女性は酩酊(めいてい)状態だった。いつ人が来るかも分からない場所で、複数の男性と性行為をすることを、女性が正常な判断で受け入れることはない」とみて、酒や薬物で抵抗できない状態にして暴行した場合に適用される集団準女性暴行容疑での逮捕に踏み切った。
一方、6人は容疑を否認し、19日に開かれた拘置理由開示の法廷では、弁護人が女子大生の当時の言動などを詳細に説明し、「酩酊状態ではなかった」と主張した。
集団準女性暴行罪は被害者の告訴がなくても立件は可能だ。起訴を見送った地検は「立証が難しくなったのではなく、告訴の取り消しで被害者が処罰を望んでいないから」と強調する。しかし、告訴の取り消しによって、公判段階で女子大生の協力が得られなくなる可能性もあり、捜査側にとって想定外だった面は否めない。
他方、全面的に容疑を否認していた6人が示談した事実は、少なくても6人に道義的な責任があったことの裏返しだとも言える。性暴力の被害者を支える「ウィメンズカウンセリング京都」の井上摩耶子代表は「刑事罰に問われなくとも、6人の取った行動は女性の性的自己決定権を奪う行為だ。告訴を取り消したことで、女子大生が心ないバッシングを受けないかが心配。周囲のケアは欠かせない」と気遣う。
佛教大の広瀬卓爾教授(犯罪社会学)は「6人の行動はどこの学生でも起こしうる問題だ。集団で飲酒した上での『ノリ』で行われたなら、それをやめさせる判断は周囲にも生じにくい。再発防止のためにも、原因を解明し、大学にかかわるすべての人が自戒するきっかけにしなくてはならない」と訴えた。
■学長「再発防止取り組む」
京都教育大の寺田光世学長は「今回の不祥事を厳粛に受け止める。人権意識、社会規範、性モラルの向上を図り、飲酒に関する指導を徹底し、再発防止に真摯(しんし)に取り組む」とコメントした。
大学は現在、全学生を対象に、人権に関する指導や、就職活動、学生生活への事件の影響についての相談を行っている。夏休みまでに弁護士らを講師にした特別講義と、人権などをテーマに学生と教員によるディスカッションを実施する。