教員の起立斉唱は義務と認定/横浜地裁

教員の起立斉唱は義務と認定/横浜地裁
2009年7月17日1時0分配信 カナロコ

 県立学校の教職員ら135人が県に対し、入学式や卒業式で国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する義務がないことの確認を求めた訴訟で、横浜地裁(吉田健司裁判長)は16日、「起立、斉唱は儀礼的行為。命令が発せられた場合には起立斉唱する義務を負う」などとして、原告側の訴えを棄却した。原告側は控訴する方針。

 原告側は、起立斉唱は国旗国歌への「敬意」を表明する行為で、起立斉唱命令は思想、良心の自由を定めた憲法19条に違反しているなどと主張していた。

 判決は、式典での起立斉唱は「通常想定され、期待される儀礼的な行為」だと指摘。起立斉唱命令が「原告らの精神活動に影響を与えることは否定できない」としながらも、「直ちに原告らの信念を否定するものではなく、生徒や父母の思想、良心の自由を侵害するものともいえない。校長が行う指示命令は、適法な職務行為」とした。

 また、教職員が起立斉唱しない状況を「式に参列する来賓や保護者に不信感を抱かせて対外的な信用を失墜するほか、式の円滑な進行の妨げとなる恐れがある」と批判。「生徒に対する指導上も問題があることは明らか」として、校長が教職員に起立斉唱を命じる必要性を認めた。

 判決を受け、原告側弁護団は「少数者の精神的自由を保障する憲法の理念を踏みにじるもので、教育への行政の不当な介入に対する危機意識を欠いている」とした抗議声明を発表。松沢成文知事は「きわめて妥当な判決。これまで通り指導が適切に行われることを期待します」とコメントした。

◆「これまでの判決で特にひどい」
 「これまでの判決の中でも特にひどい。極めて不当な判決」。判決言い渡し後、横浜地裁近くの横浜市開港記念会館(同市中区)で会見を開いた原告側弁護団は、一様に判決への不満を口にし、怒りをあらわにした。

 弁護団が問題視したのは、棄却の判決結果以上に、その内容。原告側の主張について詳しく言及せずに「起立斉唱は儀礼的行為」などと一方的に断じた文面に、神原元弁護士は「原告の思いを受け止めた部分が1行もない。激しい怒りを覚える」と厳しく批判。大川隆司弁護団代表も「国民の常識に著しく反している。判決理由の文言からは、教職員への悪意がにじみ出ている」と声を荒らげた。

 原告団長で県立高校教諭の男性(56)は「公務員といえど一人の人間。思想信条がきちんと尊重される日本であってほしいと思ってきたが、今日の判決でそれは砕かれた」と肩を落としながらも、「だからといって頭をたれるわけにはいかない。あらためて次の司法の場に臨みたい」と述べ、控訴審へ決意を新たにしていた。

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