教員は政治力 民主、「わが世の春」待つ日教組

教員は政治力 民主、「わが世の春」待つ日教組
2009年8月10日13時2分配信 産経新聞

 「静岡県知事選で、私どもが推薦した川勝平太さんに、皆さんがご指導いただいたおかげで勝利をつかみ取ることができました」

 7月6日、東京・永田町で開かれた日教組大会。民主党代表、鳩山由紀夫は日教組出身の参院議員会長、輿石東(こしいし・あずま)らとともに出席し、前日の静岡県知事選での支援に深く頭を下げた。

 静岡県知事選では、輿石が7月1日に静岡入りし、県教組の全面支援を取り付けていた。公立学校教員の政治的行為は法令で厳しく制限されているが、輿石は意に介さず、大会でいつもの持論を展開した。

 「政治を抜きに教育はない。教育を語るとき政治を語らなければならない」

 民主党は、有力な支持組織を連合のほかに持っていない。そして、頼りの連合の中でも「選挙に強いのは自治労と日教組」(UIゼンセン同盟幹部)だ。

 日教組は昭和22年に連合国軍総司令部(GHQ)の意向で設置されて以降、ずっと政治闘争を繰り返してきた。そのエネルギーはいま、民主党政権実現のために傾けられている。

 輿石がかつて委員長を務めた山梨県教組「30年史」にはこう書かれている。

 《国会議員を送り出せる山教組という、自らの戦いによって勝ち取った大きな「政治力」は、つぎには、山教組と協働しうる県知事を当選させ、県議選に大きな力を発揮してきた》

 代表代行、小沢一郎は7月25日、山教組の政治団体の勉強会で、早くも来年の参院選後の輿石のポストを“予言”してみせた。

 「本人が嫌だと言わない限り、参院議長という名誉ある地位が待っている」

 ■北朝鮮に親しみ

 7月25日、宮崎市のホテルで開かれた自民党の会合。首相補佐官(拉致問題担当)の中山恭子は北朝鮮問題にからめ、こんな事実を明らかにした。

 「政府が独自の制裁措置をかけたとき、元日教組委員長が議長を務めるグループから首相あてに、『日本が北朝鮮に制裁措置を加えるのはけしからん、直ちに制裁措置をやめるべきだ』という要望書が届いた。びっくりした」

 中山が紹介したのは元日教組委員長、槙枝元文が議長である「朝鮮の自主的平和統一支持日本委員会」が昨年12月、首相の麻生太郎と外相の中曽根弘文あてに送った文書だ。

 槙枝は日教組委員長を12年間も務め、“ミスター日教組”といわれた。最も尊敬する人物として故金日成主席の名前をあげ、平成3年には北朝鮮から親善勲章第1級を授与されている。

 北朝鮮寄りの姿勢は、槙枝だけではなく、今も日教組の政策に受け継がれている。今回大会で採択された議案には「『日朝国交正常化連絡会』とともに、国交正常化にむけ…」とある。

 日教組が連携をうたう連絡会は、今年4月5日に北朝鮮が発射した弾道ミサイルについて「ロケット」と主張する。また、発射直後の4月9日には外務省を訪れ、対北制裁措置の即時解除を求めてもいる。

 日教組は以前に比べイデオロギー色が薄まったとされるが、やはり根っこは変わらぬままだ。そして民主党には輿石をはじめ、8人の「日教組議員」がおり、うち3人が「次の内閣」閣僚に名を連ねている。

 ■基本法どこへ

 民主党の衆院選のマニフェスト(政権公約)には、なぜか「日本国教育基本法案」について一切触れられていない。政策集「INDEX2009」には「民主党の教育政策の『集大成』」と掲げられているにもかかわらずだ。

 その理由について、民主党政調幹部は「理念的なものじゃなく、子ども手当とか高校無償化といった、具体的に実感できるものにした。『教育基本法を変えます』と言っても票にならないからだ」と語る。

 ただ、副幹事長の笠浩史は今春、日本教育再生機構の座談会で「衆院選のマニフェストには、日本国教育基本法を制定すると明記します」と明言していた。

 このため、党内では「日教組には『日本を愛する心』を明記した法案に強い抵抗がある。選挙前に日教組の反感を買う必要はないとの配慮だろう」(中堅議員)とささやかれている。

 一方で、「教員免許制度の抜本的な見直し」「公立小中学校は学校理事会が運営」など、マニフェストに掲載した教育政策は、日教組のそれと合致する。

 民主党政権の誕生に、日教組サイドの期待は膨らむ。日教組書記長の岡本泰良はこう展望を語る。

 「日教組として、今まで自民党の政策には反対し、文科省には要求をしてきたが、提言する余地はなかった。政権交代が実現すればいよいよ提言ができる」

 猛暑の選挙戦をくぐり抜けた先で、日教組には「わが世の春」が待っているかのようだ。(敬称略)

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