神奈川歯科大:巨額損失投資 「500万円事件」代償大きく 居座った理事 /神奈川
2009年9月12日13時2分配信 毎日新聞
◇裏口入学や名誉棄損… 巨額投資突き進む「自浄能力なかった」
「あの500万円事件の代償が大きい」。元理事の清水利朗(71)、三宅公雄(61)両容疑者が詐欺容疑などで逮捕された学校法人神奈川歯科大(横須賀市)で、関係者が「自浄能力がなかった」と明かす。「理事コンビ」は500万円事件以降、詐欺事件の舞台となった巨額投資へと突き進んだ。【網谷利一郎】
04年3月に「理事らが裏口入学で500万円授受」とスポーツ紙が報じた。OBの歯科医(川崎市)が02年に「娘を補欠入学させて」と理事、評議員に頼んだ。調査委を設けた学校側は「理事らは授受を認めたが、厳重注意処分にした」と発表した。
「この理事は三宅容疑者だ」と関係者は証言する。「娘は3回受験に失敗。親が騒ぎだし、学校を介して500万円は返還された」という。
当時の学長の会見には清水容疑者も同席した。「大学の名誉を傷つけた理事を懲戒免職にしないのか」との記者の質問に、学長は「辞めさせる規定がない。理事の選出方法を改める」と答えたが、三宅容疑者は居座った。
また、理事会で解雇された元理事が03年に「理事会で『裏金3億5000万円の一部を着服』と言われ、名誉を棄損された」と清水容疑者を訴えた。横浜地裁横須賀支部は「発言の証拠が皆無」と清水容疑者に500万円(2審は300万円)の支払いを命じた。
判決は「自らの大学出身者による大学内の覇権確立を狙った」と派閥抗争を指弾したが、敗訴後も清水容疑者は理事を続けた。
清水容疑者は同大2期、三宅容疑者は3期。関係者は「巨額投資は05年からで、500万円事件以後だ。社会常識とかけ離れた問題の理事を辞めさせられない体質が学内にあった」と悔やんだ。
◇「おわび」掲示 理事長、冷静な対応呼びかけ
「真摯(しんし)にお詫(わ)び申しあげます」。理事らが逮捕された神奈川歯科大の構内には、学生と教職員への久保田英朗理事長名の「おわび」が掲示されている。
投資失敗による巨額損失が報じられた7日付で、「心配でしょうが、7月から新しい理事会が発足し、外部委員会を設置し、その解明と責任追及を進めている」と経過を伝え「資産が減少したとはいえ、無借金経営であり、落ち着いて学業、業務に専念して」と冷静な対応を呼びかけている。
また、学校側は理事らの逮捕を受け「短大も含め約1300人の学生には、教育環境は確保しているので普段通り授業を受けて、と伝えた」と話す。
◇学生ら不安の声
巨額損失問題について学校法人は学生や保護者に経緯説明をしてきたが、元理事らの逮捕に発展したことで、学生からは不安の声も上がっている。
歯学部1年の男子学生は「逮捕のニュースに驚いた。なぜ投資先を詳しく調べなかったのか。母親から『大学が経営破綻(はたん)しないか』と心配する電話があった」。同5年の女子学生は「これ以上、大学の名が汚れないようにしてほしい。今後、学費が上がったり、授業のレベルが下がらないか心配です」と話した。【吉田勝】
9月12日朝刊