地盤沈下で秋田県が補償費7億円 敬愛学園、校舎補修せず

地盤沈下で秋田県が補償費7億円 敬愛学園、校舎補修せず
2009年11月20日6時14分配信 河北新報

 JR秋田駅(秋田市)の東西を地下でつなぐ秋田中央道路の掘削工事に伴う地盤沈下で、秋田県から補償費約7億500万円を受け取った私立国学館高を運営する学校法人敬愛学園(江畠清治理事長)が、受領から約2年経過した現在まで賠償名目の校舎補修工事に着手せず、使途が不明になっていることが19日、分かった。県は「補償に見合った補修工事を促しているが、学園から明快な回答が得られない」と困惑している。

 国学館高は地盤沈下のため、鉄筋5階建て本校舎の床のたわみや壁・内装のひび割れ、建具の不具合など計約1700件に及ぶ被害を受けた。県は2007年12月14日、補修費用のほか、仮校舎の建設や仮教室、空調設備設置のための費用も盛り込んだ補償費を敬愛学園に支払った。

 ところが、県の確認では、補償費が支払われた直後の同年12月27日に完成した校舎東側の第2体育館(講堂)の新築以外、本格的な補修工事が行われていない。

 学校教育法施行令は建物の用途変更、改築などに伴う届け出を義務付けているが、学園は県教委から促され、体育館分のみ今月9日に提出した。

 県都市計画課と県教委は「学園は講堂の『新改築工事』に1億円以上掛かったと説明しているが、実際の経費を明らかにしておらず補修の全容は把握していない」と打ち明ける。

 県教委に報告義務のない、壁や内装のひび割れ、建具の不具合に掛かる補修費など小規模工事が仮に行われたとしても、県の見積もりで約7500万円にすぎない。体育館と合わせ、補修費に充てられたのは多くても2億円前後とみられる。

 県都市計画課はこれまで、確認できるだけでも学園を6回訪問。「学園に対し毎回のように適正な補修工事を促してきた」と説明するが、被害個所の補修状況を担当者から聞き取るだけにとどまる。実際に何カ所補修したかなどは把握していないという。

 県建設交通部の加藤修平部長は「国の基準に沿った形で補償費を支払っており、学園に対して使用の報告を強制的に求めることはできない」と釈明している。

 ある県議は「民間とはいえ、学校という教育現場に支払った多額の公費の使途を県民に明らかにする道義的責任が学園と県の双方にあるはず」と指摘する。
 江畠理事長は、河北新報社の再三の取材要請に一切応じていない。学園側は「解決済みのことなので、詳しく話すことはできない」と話している。

[秋田中央道の地盤沈下問題]中央道は、秋田市のJR秋田駅を挟む東西を地下でつなぐ片側1車線、全長2550メートルの自動車専用道路。2000年に事業着手し、07年9月開通。事業費686億円。工事発注者の秋田県は04年6月に地盤沈下を確認し、国学館高のほか住宅や店舗など損失補償対象は計52件に及んだ。賠償総額は約7億8000万円。

[学校法人敬愛学園]1951年3月設立。秋田市千秋明徳町のに主たる事務所を置き、同校とを運営。江畠清治理事長は同市内にある高校・大学受験専門のの校長も務める。

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秋田・敬愛学園 2億3500万円で今年、施設購入
2009年11月21日土曜日 河北新報

 秋田中央道路(秋田市)工事の地盤沈下で、秋田県から補償費約7億500万円を受け取りながら、補償名目通りに国学館高の校舎補修工事に着手していない学校法人敬愛学園(江畠清治理事長)が今年1月、JR秋田駅前の年金福祉施設を約2億3500万円で購入し、その建物でカルチャーセンターの運営に乗り出していたことが20日、分かった。

 学園が購入したのは秋田駅前の一等地、秋田市中通4丁目の旧あきた社会保険センターの土地(約1400平方メートル)と建物(鉄筋4階と平屋)。独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構が実施した入札(最低価格1億6000万円)で、2008年8月29日に落札。今年1月6日に所有権を移転登記した。

 県は落札後の08年11月、新規事業参入に必要な法人の寄付行為の一部変更を認可。新たな収益事業の展開が可能になり、学園は社保センターの事業を継承する形で、カルチャーセンター「」の運営を始めた。

 江畠理事長は県私学連合会の会長も務める。学園は国学館高のほか県理容美容専門学校(秋田市)も運営しており、新規事業への参入はグループの多角経営の一環とみられる。

 学園は07年12月に県から補償金を支払われたが、直後に完成した第2体育館新築工事以外、現在まで校舎などの本格的な補修工事をしていない。県や市内の建設業者らの話を総合すると、県教委への報告義務のない小規模工事が仮に行われたとしても、補修費に充当されたのは多くても2億円前後とみられている。

 学園の登記簿によると、あきた文化保健センター事業はまだ記載されていないが、05年に約14億5000万円だった資産総額が今年3月、約23億8000万円に変更され、資産は大きく膨らんでいる。

 補償金の一部が新規事業の費用に充てられた可能性について、学園側は「そんなことはない」と否定した上で「補修工事はちゃんとやっているが、その内容を明らかにするつもりも必要もない」としている。江畠理事長は河北新報社の取材要請に一切応じていない。

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