元講師・校長を告訴/秦荘中・柔道部員死亡

元講師・校長を告訴/秦荘中・柔道部員死亡
2010年02月26日 朝日新聞

【遺族/傷害致死容疑など】

 愛荘町立秦荘中学校で昨年7月、柔道部の練習中顧問に投げられ、直後に意識不明となり翌月死亡した同校1年、村川康嗣君(当時12)の遺族が25日、顧問だった同校の元講師(27)を傷害致死容疑で、校長(55)を業務上過失致死容疑で県警に告訴した。(堀川勝元)

 告訴状によると、村川君は昨年7月29日、2人1組で技の応酬をする「乱取り」の練習中、元講師に投げられた直後に意識を失い、病院に運ばれたが約1カ月後に死亡。死因は「頭部外傷による急性硬膜下血腫」だった。同校は昨年7月の県大会男子団体で準優勝した強豪校。村川君は受け身もうまく取れない初心者だったが、当日は上級生を相手に1本2分間の乱取りを重ねた。26本目で上級生に代わり相手になった元講師に投げられ、意識を失ったとされる。

 告訴状で、遺族は「(村川君は)練習に耐えられない身体状態で、元講師との乱取りは一層のダメージを与えるだけの『暴力』だ」と指摘。校長については「元講師に適正な指導方法について教示し事故の発生を未然に防ぐ注意義務を怠った」としている。

 町教委の辻孝志教育次長は「告訴内容がわからずコメントしようがない。練習中に亡くなったことについては弔意を申し上げるが、原因については警察の判断が出ておらず答えられない」と話した。

【「休ませて」再三求め】

 遺族によると、村川君は幼いころからぜんそくを患い、「体力をつけたい」と中学入学後の昨年5月に柔道部に入った。県内強豪校の練習はハードで、入学前に71キロあった体重は8キロ減った。心配した母弘美さん(42)は、元講師に「体調が悪かったら休ませてください」「息子のペースで練習をさせて下さい」などと再三にわたり申し入れていたという。

 部員の証言によると、村川君が倒れた昨年7月29日の練習は、試合の成績が悪かった1年生に上級生と組み合う「乱取り」が命じられた。実力差は大きく、1年生は一方的に投げられた。村川君は途中で「声が出ていない」という理由で他の2人とともに乱取りを続けさせられた。

 告訴状によると、15本目の乱取り後の給水の際、水筒が置いてある方向とは逆の方へ歩き、元講師に呼び止められた。遺族側は「意識障害の兆候が見てとれる」と主張する。フラフラの状態になりながら24本目からは1年生で1人残って乱取りを続け、26本目で仰向けになったまま意識を失った。

 遺族側は「指導者が康嗣の状態を適切に見ていれば、命は助かっていた」と訴える。

 町教委は今年1月、教育委員5人が学校側の作成資料や顧問からの聞き取り調査をもとに「事故報告書」を公表。元講師が課した練習について「初心者の村川君にとって厳しい指導だったことはうかがえる」と指摘したが、練習と死亡の因果関係については「不明」としている。

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