殺人罪、懲役10年判決
2010年03月04日 朝日新聞
県内では初めて殺人罪に問われた事件を審理した裁判員裁判は最終日の3日、高知地裁で評議と判決公判があった。伊藤寿裁判長は被告に懲役10年(求刑懲役13年)を言い渡した。判決後、記者会見に応じた裁判員経験者らは「責任の重さを感じた」「苦しかった」と感想を述べた。(小寺陽一郎、日高奈緒、清水大輔)
裁判では、自宅マンションの居間で、妻修竹さん(当時42)の首などをナイフで数回刺して失血死させたとして、高知市桜井町2丁目の元中学校教諭今原荘典被告(61)が殺人罪に問われた。
判決では「自宅でくつろいでいた被害者を何度もナイフで突き刺した犯行は残酷である」と指摘。「10日以上前から殺害を決意し、あらかじめナイフを隠すなど、犯行は計画的で、殺意は強い」と述べた。動機については、被告が修竹さんに不満を抱いた事情を考慮しても「身勝手との非難を免れない」とした。
そのうえで「自殺を図ったものの死にきれず、自首し、反省している」「長年まじめに働き、同級生や地域の人により嘆願書が作成されている」として「被告人のために酌むべき事情も認められる」と述べた。この間、裁判員らは今原被告を見ることはなく、手元の判決文をじっと見つめていた。
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判決後、高知地検は「懲役10年という判決はこちらの主張・立証が裁判員に理解された結果と考えている。今後も分かりやすく的確な立証に努めたい」とコメントした。一方、稲田知江子弁護士は「被告と被害者の関係を分かりやすく伝えるには日程的にかなり厳しかった」と話した。
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判決後、6人の裁判員のうち3人が記者会見に応じた。殺人事件を審理した感想を聞かれ、1番の男性は「荷が重いかなと思い、不安もあったが、思ったより緊張せずに参加できた」と話した。
4番の女性は「責任の重さをとても感じた。普段の生活からかけ離れているけど、貴重な経験ができた」と語り、「難しい言葉を使われることはなく、内容が分からないこともなかった」。5番の女性は「選ばれた時から、刑期を考えるのを含めて苦しかった」としながらも「裁判官が難しい言葉を分かりやすくかみ砕いて下さった」と述べた。
今回の裁判では、遺体や傷口の写真が裁判員の手元のモニターに映し出された。1番の男性は「裁判員に選ばれなければ、見たくない写真だった。しかし判断するうえでは必要な資料だった。本質的なところを見ずに判断を下すことはできないと思った」。4番の女性は「遺体の写真はとてもショック。でも事実を知るうえではとても大事だと思った」と話した。