「民主の象徴」山梨決戦 逆風の教組「今回は難しい」 2010参院選
2010年6月25日7時56分配信 産経新聞
政権交代から9カ月。24日公示された参院選は民主党政権に対する初の全国規模の審判となる。相次ぐ「政治とカネ」問題やマニフェスト(政権公約)の修正、首相交代後に浮上した消費増税…。支持率をV字回復させた民主は逃げ切りを図り、追う野党は重点選挙区に幹部を投入、追い上げる。争点がはっきりしない中、有権者はどう判断するのか。17日間の論戦が始まった。
■「教え子に胸張って」
「私は山教組の出身。組織内候補として衆院選に出た20年前のことが忘れられない」
午前10時すぎ、山梨選挙区に出馬した民主党の参院議員会長、輿石東氏(74)は甲府市内の選挙事務所で行われた出陣式で声を張り上げた。
「山教組」とは日本教職員組合に加盟する「山梨県教職員組合」。最近、北海道教職員組合の違法献金事件などで教組への風当たりは厳しいが、山教組でも政治資金事件や政治活動が問題視されていた。
懸命に山教組OBらに支持を訴える元教員の輿石氏に対し、自民は党首や著名候補を投入。早くも総力戦の様相だ。
ほぼ同じ時間、約1キロ離れた選挙事務所で出陣式を行った自民党新人、宮川典子氏(31)も元教員。しかし、その口からは組合の「く」の字も出なかった。逆に輿石氏を皮肉るように、「教え子に胸を張って山梨を残せるようにしたい」と訴えた。
傍らには谷垣禎一自民党総裁や比例候補で元プロ野球選手の堀内恒夫氏(62)の姿も。谷垣氏は「教職員組合を擁し、労組にどっぷりつかった民主党を体現している」と輿石氏を厳しく批判した。
■世代対決を強調
自民党総裁が国政選挙の第一声を地方都市で上げるのは異例だ。山梨選挙区にはこのほか、共産の花田仁氏(49)や無所属の根本直幸氏(44)、木川貴志氏(36)も立候補したが、小沢一郎前幹事長と近く、教職員組合と関係が深い輿石氏との対決を重視、山梨を「最重点選挙区」に選んだ。
ただ、強力なバックを持つ輿石氏は優位な戦いを進め、宮川氏が追う構図は否めない。首相交代で民主政権の支持率がV字回復したことも重くのしかかる。宮川氏の陣営には「たちあがれ日本」の推薦で「反民主勢力」の結集が進んでいる形だが、ある自民党県連幹部は「『民主対自民』ではなく『古い輿石に若い宮川』という個人戦として無党派層にアピールしたい」と話し、世代対決を強調する。
1日かけて県内を選挙カーで回った宮川氏は夕方、甲府駅前で街頭に立ち、「マニフェスト違反を繰り返す不誠実な政党に、今の政治を任せることはできない」と訴えた。足を止めるサラリーマンの姿もあったが、選対幹部の表情は険しかった。
■今回はノルマ20票
一方の輿石陣営にも楽観的な見方はない。「今回は難しい戦いだ」。ある陣営関係者は打ち明ける。
支持母体の山教組の選挙作戦がこれまでになく難航しているのだ。組合員の教員一人一人が、知人に「個票」と呼ばれる後援会カードに記入させ、名簿を作って電話する作戦なのだが、教師の政治活動に批判が集まり、「個票」が集まらない。6年前は1人80票ものノルマが課されたが、今回は20票集めるのが精いっぱいだ。
さらに、最大の後ろ盾だった小沢前幹事長が、自身の資金管理団体をめぐる政治資金規正法違反事件で表だって動きがとれない。同日、小沢氏は山梨県内で金丸信元自民党副総裁の墓参りをしたが、選挙カーで県内各地を回る輿石氏と合流した様子はなかった。