教員不祥事続発/連鎖の構造照らし出して
2010年12月20日月曜日 河北新報
「個人の資質に関わること。防ごうとしても限界がある」「生活ぶり全てを見張るようなこともできないし…」
教職員の不祥事が続発している。東北の各県教委からも半ば、あきらめとも受け取れる声が漏れるほどだ。6県教委が本年度4~11月に決めた懲戒処分は計105件(111人)。前年度同期より11件多く、免職は12人から23人に増えた。
飲酒運転、ひき逃げ、公金横領に児童買春、トイレ盗撮など事犯の内容はさまざまで、それぞれ悪質だ。研修会での注意喚起、マニュアル配布といったありきたりの対策では、もう防止効果は期待できないだろう。
頻発する連鎖の構造を照らし出すには、まず一つ一つの事例の徹底的な検証が必要だ。その情報を県教委単位にとどまらずに積み上げ、重ね合わせた上で、分析結果を普段から共有できる仕組みが欲しい。
県別の処分件数は前年より11件増えた青森の29件が最も多く、次いで福島が27件。岩手19件、山形13件と多発傾向に歯止めがかからない。
発覚した後、11月末の段階では懲戒処分が決まっていなかった悪質な不祥事も多い。処分件数はさらに増えるだろう。
福島県教委は17日、盗撮やひき逃げなどで6人もの懲戒処分を決めた。うち2人が免職になった。
懲戒免職の2人はいずれも学校内での盗撮。県教委によると、会津地方の県立高の男性常勤講師の場合、授業中の教室で女子生徒のスカートの中を撮影した。もう一人の須賀川市の小学校の男性教員は、女子トイレに入ってビデオカメラで隣の個室内を撮ろうとしたという。
各県それぞれに対応策を打ち出してはいる。研修強化(岩手)や再発防止マニュアルの配布(福島)のほか、秋田は教員と生徒のメール交換を禁止し、宮城は来年度からの教員採用試験への適性検査導入を決めた。
ただ、福島をはじめ既に一昨年から不祥事の多さが問題になり、対策が取られたはずの県でも、減らないばかりか悪質なケースが一層目立つようになった。社会人としての常識、資質といった点だけを問題にする視点では抑止は期待できない。
学校や教員を地域で支える環境が失われた。親や子どもの教師に対する意識が変わり、中堅・ベテランの教員もこれまでの接し方が通用しなくなった。何より教員の忙しさが増し、ストレスが膨らんでいる。不祥事の要因はさまざまに語られる。
決め手を見つけ出して、すぐさま一掃できるような問題ではない。特定の地域、特定の県に偏った現象ではないことも明らかだ。遠回りではあっても根元までたどり、構造として捉え直す視点が欠かせない。