’10取材帳から:/8 例年になく相次いだ教職員不祥事 /宮城

’10取材帳から:/8 例年になく相次いだ教職員不祥事 /宮城
毎日新聞 12月28日(火)11時37分配信

 ◇思い切った改革が必要
 トイレ盗撮に下着泥棒、飲酒運転に私的流用--。
 今年は例年になく教職員の不祥事が相次いだ。懲戒処分(27日現在)は11件14人に上り、うち免職7人は統計が残る過去10年で最多を更新。県教育委員会への取材からは、教育現場と危機意識を共有できない焦りともどかしさが垣間見える。
 「教員の多忙化が進み、横の関係が希薄で孤立してしまう」
 県教委の小林伸一教育長は11月17日、県庁で開いた緊急記者会見で不祥事多発の背景を分析した。教員一人一人が悩みを抱え込んでしまう傾向が強く、「車通勤が増え、仕事後に飲みながら話を聞くチャンスも持ちにくい」(小林教育長)という。
 さらに、「まだ学校側には『人ごとだ』という受け止め方が多い。誰もが問題を起こしうる当事者だと胸に刻んでもらえるよう働きかけていく」と語気を強めた。
 確かに、教育長がいくら通達や緊急メッセージを学校に出しても、その効果には疑問符が付く。私の高校時代の経験からすれば、他校でケンカや万引きなどの問題が起きて、校長が全校生徒に「駄目ですよ」と訓示をしても、人ごとだと思って真剣に受け止めることはなかった。
 やはり現場第一。県教委は今月、「学校運営支援チーム」を新設した。県教委職員が学校を直接訪問して教職員と意見交換を行い、県教委の5課1室の垣根を越えて横断的に職場改善プログラムを作成する方針だ。
 現場と危機意識を共有するためには、教育長や課長らができるだけ多くの学校に足を運び、「大変な問題なんだ」と切実に訴えかけることが求められる。さらに現場の声をきめ細やかに吸い上げ、風通しの良い職場作りをサポートすることが再発防止の第一歩になる。
 多忙は不祥事を起こす理由にはならない。目が回るほど忙しい職場は他にもたくさんある。やはり教職員のモラル改善も不可欠だと思う。県教委は採用試験に適性検査を導入する方針だが、それに加えて複数回の面接で人物を慎重に見極めるような制度が必要だ。
 まだ処分が出ていない不祥事も4件あり、中には女児の裸をデジタルカメラで撮影したり、「下着を売ってくれ」と女子高校生をカッターナイフで脅すなど、悪質極まりない事案も含まれる。
 教職員の不祥事は学校に対する地域の信頼を損ね、日々まじめに教壇に立つ多くの教職員のモチベーションを低下させるなどさまざまな悪影響がある。何より、一番の被害者は児童生徒だ。
 長崎県では、教員が児童生徒の目の前で「不祥事根絶宣言」を読み上げる取り組みが始まったという。宮城県もそれぐらい思い切った改革が必要なレベルまで来ているのかもしれない。【鈴木一也】=つづく

12月28日朝刊

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