就職で差別って?教員免職でも氏名公表しない県
2011年2月20日15時14分 読売新聞
教職員の懲戒免職処分を巡り、九州・山口9県の教育委員会のうち、鹿児島県教委だけが実名公表の規定を設けず、過去5年間の免職処分全11件で名前や所属先を伏せていたことが分かった。
宮崎県教委は規定を定めながら、あいまいな運用で約半数を匿名にしていた。両県以外の県教委は原則公表しており、自治体によって大きな差があることが浮き彫りになった。
両県を除く7県教委は2003年から09年にかけて、わいせつ事案など被害者のプライバシーに影響を及ぼす恐れがある場合を除き、実名や所属名などを原則公表する規定を設けた。
公表理由は「公務員の不祥事については市民に知る権利があり、自治体側に説明責任がある」(沖縄)、「再発防止と教職員全体に自覚を促すため」(長崎)など。
しかし鹿児島県教委は規定を定めず、10年度までの5年間に免職した11人の名前を伏せている。中には生徒以外の女性に対する強姦(ごうかん)致傷事件で逮捕された県立高実習助手や、酒気帯び運転で車3台が絡む追突事故を起こして逮捕された小学教諭らが含まれる。わいせつ行為で処分した中学教諭については、事案そのものを公表しなかった。
同県教委は「処分した教職員の学校が特定されると、生徒が就職などで差別される恐れもある」と釈明する。
宮崎県教委は04年に「重大事件を起こして免職した場合は原則、氏名と所属名を公表する」と定めた。だが重大かどうかは県教委の判断に委ねられており、規定をつくった後の免職者18人のうち、酒気帯び運転で人身事故を起こした中学教諭や、生徒から集めた教材費など41万円を着服した中学教諭ら8人の所属先や名前を明らかにしなかった。着服は類似ケースが二つあったが、一方だけ伏せた。
同県教委は「酒気帯びは社会的に重大な事件ではないと判断した。同様の着服事案でも、一方は教諭が自殺をほのめかしたので公表しなかった」と説明。その上で「基準があいまいとの指摘もあるため運用方法を再検討したい」とする。(関屋洋平)