国旗国歌訴訟、都側が逆転敗訴 東京高裁 教職員167人の処分取り消し

国旗国歌訴訟、都側が逆転敗訴 東京高裁 教職員167人の処分取り消し
産経新聞 2011年3月11日(金)7時56分配信

 卒業式などの君が代斉唱で起立しなかったのを理由に、職務命令違反で懲戒処分としたのは不当だとして、東京都立高校の教職員167人が、都に処分取り消しと慰謝料を求めた訴訟の控訴審判決が10日、東京高裁であり、大橋寛明裁判長は「懲戒権の範囲を逸脱している」とし、請求を棄却した1審東京地裁判決を変更し、全員の処分取り消しを言い渡した。慰謝料の請求は棄却した。

 都は平成15年10月、入学・卒業式時に国旗に向かっての起立や国歌斉唱を求める通達を各校長に出したが、原告は国歌斉唱時の起立やピアノ伴奏などを拒否し、懲戒処分を受けた。

 大橋裁判長は通達について、「思想良心の自由を侵すものではない」と違憲性を否定。一方、教職員の不起立行為は職務怠慢によるものではなく、「生徒に正しい教育を行いたいという信条に由来する、やむにやまれぬ行動。式を混乱させる意図はなかった」と認定した。

 その上で、不起立行為を理由とした都の懲戒処分は「社会通念上、著しく妥当性を欠く。懲戒権を乱用するものだ」として全員分の処分取り消しを決めた。

 判決後会見した教職員の弁護士は「違憲判決は得られなかったが、明確に懲戒処分はいけないとしたのは評価できる」とした。

 21年3月の1審東京地裁判決は、都の通達に基づく職務命令について「公務員の教諭に卒業式などの儀式で一律の行為を求めたことには合理性がある」とし、請求を棄却していた。

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通達は合憲でも処分は不当…教育現場に戸惑い 国旗国歌訴訟
産経新聞 2011年3月10日(木)21時44分配信

 今回の東京高裁判決は、国旗への起立や国歌斉唱を求めた通達に違憲性や違法性はなく従う義務があったとしながらも、懲戒処分は不当だとした。卒業式・入学式シーズンを間近に控え、教育現場は戸惑いが広がりそうだ。

 平成15年10月の通達以降、処分を受けた教師らが訴訟を起こすケースは他にも相次いでいるが、最高裁は19年2月、君が代のピアノ伴奏を拒否した音楽教諭に対する判決で「伴奏の職務命令は思想・良心の自由を侵害しない」との判断を示している。今回も基本的にはこの最高裁判例に沿った内容だ。

 高裁判決はまず卒業式での国歌斉唱や国旗掲揚は「広く承認された儀礼であり、違法ということはできない」と断定。通達が憲法19条が保障する思想および良心の自由を侵害せず、旧教育基本法が禁じた「不当な支配」にも該当しないと断言した。

 さらに教職員らの行動は「都教委の教育現場への介入を過剰なものと決めつけて抵抗するという面を有する」とまで言い切った。

 そこまで認定しながら、「懲戒処分は裁量権の濫用」と断じた高裁判決は式典の取り組みに少なからず影響を与えると言える。同じ東京高裁ではわずか1カ月半ほど前の1月28日、教職員が起こした同種の請求が全面的に退けられていることも戸惑いを深くしそうだ。

 都教委が通達を徹底できるか。今後の対応が注目される。

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