追跡・発掘:ストーカー教諭停職1月 「軽すぎる」批判続出 /山梨

追跡・発掘:ストーカー教諭停職1月 「軽すぎる」批判続出 /山梨
毎日新聞 2011年3月26日(土)12時54分配信

 ◇異例の多数決決定
 県教育委員会は23日、09年2月までの約2カ月間、教え子の3年の女子生徒にストーカー的行為を繰り返した甲府市立中の50代の男性教諭について「スクール・セクハラと認められる」と認定し、停職1月の懲戒処分にした。教諭は同年3月にも3年生全員の成績表を外部流出させている。同日の県教委の会議では民間出身の委員から「処分が軽すぎる」との声が相次ぎ、人事案件としては異例の多数決による決定が行われていたことが関係者への取材で分かった。多くの現場教員からも疑問の声が上がる処分が出された背景を調べた。【中西啓介】

 県教委によると、教諭は08年12月後半〜09年2月下旬、顧問だった卓球部の女子生徒にメールを計約70回送信した上、生徒が拒否しているのにもかかわらず強引に自宅で面会した。同年3月27日には、3年生の男子部員らに生徒指導室の片付けを手伝わせ、うち2人が成績が記された「素点票」を持ち出し、3年生全員160人分の成績が外部流出した。
 県教委は23日の定例委員会で、教諭の処分を審議した。県教委によると、教諭の処分に関する資料が配布されたのは午後3時半ごろ。この日の会議では、2月に昭和町のホームセンターで商品を万引きしたの処分も決める予定だった。
 処分の審議が始まった直後、委員から「2人の処分は同時に審議すべきだ」という意見が出され、事務局側は万引き事件に関する資料も配布。この時、ストーカー問題の教諭を停職1月とする一方で、万引きは停職6月とする事務局案が提示された。
 「万引きが(停職)6カ月で、子供が被害者のセクハラが1カ月では軽すぎる」との発言が委員から相次いだ。セクハラの教諭を擁護する意見は皆無だった。事務局側は万引きの処分は停職6月が通例と説明した上で、セクハラについては県内外の処分事例を挙げて「これでも重い処分」との見解を示した。
 複数の関係者によると、議論は約80分続いたが、意見がまとまらず、全会一致が通例の県教委では異例の賛成多数で事務局案が承認されたという。
  ◇    ◇
 「停職1月」の根拠とは−−。県教委義務教育課の担当者は「子供にセクハラした直後に、こんな形で成績流出させる事例は全国にもなく、難しい処分だった」と振り返る。
 県教委の懲戒処分には最も重い免職から、停職(1〜6月)、減給、戒告の4段階が定められている。県教委がストーカー問題の処分の量定について参考にしたのは、09年12月に同僚女性に性的な内容を含むメールを送り続け、セクハラに当たるとして停職1月の懲戒処分とした福祉保健部出先機関の男性職員のケースなどだ。最も近似した例としては、三重県教委が10年7月に、中学の教え子に「会いたい」などと1年間に約1000通のメールを送った男性教諭の戒告があった。
 県教委は、一連のメールや自宅への押しかけ行為などが、直接的なわいせつ行為ではないものの、支配的な地位にある教員が教え子に対し行ったセクハラと判断。わいせつ画像を送りつけるのと同様に重いと考え、停職相当としたという。
 成績流出については、成績表管理に関する過失の程度と、流出した範囲から処分内容を検討。子どもに書類の処分を手伝わせたことは「ほとんど故意による流出」(同課)と断定。成績を口外されたのが女子生徒1人だったことや、ファイル交換ソフトによる情報流出で最も重い処分例が減給であることなどにかんがみて、今回は戒告にとどまると判断し、「総合判断で停職1月が相当」との事務局案を作成したという。
 ◇県教委「前例考慮し妥当」
 今回の処分については、県内の公立中の教員からも「甘い」との批判が根強い。ある男性教諭は「職場はこの話題で持ち切り。『警察ざたにならなきゃ懲戒処分も大したことないな』と嘲笑する教員もいる。問題教員を守ろうとする教委の体質に怒りさえ感じる」と話す。また、ある県教委関係者は「一晩寝た後の酒気帯び運転でも懲戒免職になるのに、生徒が被害者になる二つの不祥事を起こしながら停職1月。これを見て妥当と思う県民はいない」と憤慨する。
 こうした声に、県教委義務教育課は「過去の事例とのバランスや他県の例を考慮した妥当な処分で、県民感情を考慮し教諭の処分だけを重くすることはできない」という姿勢だ。一方で、教諭の聴取を担当した県教委担当者は、成績流出について教諭が当初の市教委の調査に「書類のシュレッダー掛けを生徒にさせた」としていた供述を「箱に入った書類を運ばせただけ」と一変させたことを挙げ、「子供に責任を押しつける言い逃ればかり。本当に反省しているとは感じられない」と憤りを隠さない。
 教諭は来月23日までの停職を終えると、不適格教員として1年以上の研修を受ける見込みだ。同課は「懲罰である停職だけでなく、研修も含めて問題のある教員をどう改善するのか考えていきたい」と話している。

3月26日朝刊

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ストーカー教諭:甲府市教委、隠蔽校長に文書訓告 「再発防止に努める」 /山梨
毎日新聞 2011年3月26日(土)12時54分配信

 甲府市立中の50代の男性教諭によるストーカー・成績流出問題で、二つの不祥事を把握しながら県教委や市教委に必要な報告をせず隠蔽(いんぺい)した元市教委学校教育課長で、問題の起きた中学の現在の校長(60)に対し、市教委は25日、市教委が行う指導措置で最も重い文書訓告にした。
 市教委によると、校長は同課長だった09年3月、学校からの報告でストーカー問題を把握しながら、県教委に処分を求める報告を行わず、生徒の担任がまとめた被害報告書を紛失させた。さらに同校の校長着任後の同年4月、教諭が顧問を務める卓球部の男子生徒に成績表の処分を手伝わせ、成績が外部流出した問題を調査した際、市教委に報告せず学内でもみ消した。
 取材に対し、長谷川義高教育長は「校長の危機管理意識の欠如が原因だ。再発防止に努める」と話した。【中西啓介】

3月26日朝刊

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