民主迷走 教員免許ピンチ 更新制度「廃止」見込み外れ

民主迷走 教員免許ピンチ 更新制度「廃止」見込み外れ
産経新聞 2011年6月15日(水)15時34分配信

 ■駆け込み受講 キャンセル待ち状態

 教員免許の更新に必要な講習に教員の応募が殺到し、キャンセル待ち状態などが続出している。衆院選で政権交代を果たした民主党が、一度は教員免許更新制度の廃止を打ち出したものの、その後の参院選で惨敗。「ねじれ国会」で制度廃止の法案が提出できず、いまも制度が存続しているためで、制度存廃をめぐる迷走劇の余波が教育現場を直撃した格好。“駆け込み”応募の急増で受講しにくい状態となっており、教員の間からは「受講できなければ教員を辞めないといけないのか」などと動揺が広がっている。

 教員免許更新制度は、自公政権下で平成21年度に始まり、教員免許に10年の有効期間が設けられた。文部科学省認定の大学などで必要な講習を受け、認定試験に合格しなければ教員免許は失効する。

 大阪府では、23、24年度に受講が必要な教員や講師は計約1万人。必修の「教育の最新事情」講習では、府内で23年度、13大学が計約4700人分の講習を用意しており、大阪教育大は最も多い3千人分を受け持っている。

 ところが、大教大が今月6日午後4時に専用サイトで受講受け付けを始めたところ、応募が殺到。翌日午前0時ごろまで、ほとんどサイトにつながらない状態が続いた。

 大教大によると、15日午前の時点でも、講習の定員の9割以上がキャンセル待ちの状態。特に、教員が受講しやすい夏季の講習に応募が集中しているという。大教大の担当者は「講習の数も十分に用意したが、他府県からの申し込みも多く予想を超えた部分もあった」と驚く。

 こうした駆け込み応募の背景には、平成21年に政権交代を果たした民主党が、翌22年の参院選惨敗で制度を廃止できず、廃止を見込んで22年度の受講を見送った教員たちが、今年度の講習に流れ込んでいる事情がある。

 通信講座で受講する手段もあるが、試験日程の調整が難しく、人気は低いという。

 キャンセル待ち状態などが続出している大阪府では、府教委が「秋以降の受講や他府県での受講も検討してほしい」と呼びかけている。しかし、兵庫県や京都府でも事情は同じで多くの講習が募集締め切りやキャンセル待ちになっているといい、更新時期の迫った教員の間には焦りや動揺が広がっている。

 大阪府内の市立小学校の女性教諭(55)は「パソコンの前に未明まで座り続け、応募を試みたが、全くアクセスできない状態。やっとつながったと思ったら、キャンセル待ちの表示。受講できない同僚の間では『教師を続けられないのでは』『どうしよう』と不安が広がっている」と打ち明ける。

【用語解説】教員免許更新制度

 教員に必要な最新の知識・技能の習得を目的に平成21年度に導入され、教員免許に10年の有効期間を設けた。文部科学省認定の大学などで、2年間で計30時間以上の講習を受け認定試験に合格しなければ、教員免許が失効する仕組み。文科省によると、23年度に受講期限を迎える教員は全国で約8万1千人。

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