学長共著は「不正論文」 琉大データ流用問題、新たな処分せず
琉球新報 2011年6月29日(水)10時0分配信
琉球大大学院医学研究科で2010年に起きた論文データ流用問題に関連し、学外の有識者らでつくる調査委員会は、岩政輝男学長が共著者となっている論文1編を再調査し「不正論文である」との結論を出した。琉球大が28日記者会見し明らかにした。これまで学内の医学研究科調査委などが示していた「不正は認められなかった」との見解を否定した形となった。一方、学長を含めた関係者には、既に口頭注意処分されたとの理由で新たな処分は行わない方針を示した。同論文について撤回などの措置を進めている。
岩政学長は、論文が学術誌に掲載された後に論文を渡され、自分が共著者になっていると認識していたことを明かした上で「内容をよく把握していなかった。共著者として誠に申し訳ない」と謝罪した。
問題になっていたのは米学術誌「BBRC」に07年に発表された、岩政学長が共著者の1人だった論文。医学研究科調査委は10年12月に記者会見し、データにオリジナル性があるとして「不正は認められなかった」としていた。
学内外から不正の指摘を受けことし4月に外部調査委を設置。著者への聴取の他、実験ノートや実験データ、写真スライドなどの照合を行い、研究手法を精査した結果、実際に行っていない実験内容を掲載していることから不正論文であるとの結論に達した。
医学研究科調査委の委員長を務めた佐藤良也前研究科長(現理事)は、28日の会見前に開かれた教育研究評議会の場で「調査が不十分だった」とわびたという。
外部調査委は琉球大外の有識者5人で構成。氏名は公表されておらず、7月中の最終報告時にメンバーを含めて発表する予定。
同問題は米学術誌の指摘を受け10年3月に発覚。同4月に医学研究科が調査委員会を立ち上げ、調査を進めた。同8月に指導に当たった男性教授が懲戒解雇処分、同12月には論文の筆頭著者である修了生4人の学位が11年1月中に取り消される見込みだったが、その後一転。男性教授とは3月に和解が成立し、6月に復職したほか、3月には文科省の指摘を受け修了生の学位維持を決めた。