文科省提出は「ダミー版」 朝鮮学校教科書、組織的偽装の疑い
産経新聞 2011年10月4日(火)7時55分配信
朝鮮学校への無償化適用を審査している文部科学省に、学校側が「ダミー版」教科書を提出した疑いが強いことが3日、分かった。学校側は拉致問題などに関する記述を訂正した、審査対象10校分の教科書を提出したが、関係者の証言から生徒が使うものではなく、教員指導用に作った資料書だったことが判明。無償化獲得に向け、組織的に改訂を装っていた疑いが浮上した。(桜井紀雄)
無償化審査の対象となる朝鮮高級学校(高校)の歴史教科書には「日本当局は《拉致問題》を極大化し…反朝鮮人騒動を大々的に繰り広げ」といった拉致問題への日本の取り組みを否定する記述や、大韓航空機爆破事件を「捏造(ねつぞう)」とする記述があり、政府内から訂正を求める声が上がった。
高木義明前文科相も「全力で改善を促す」と表明。無償化審査の過程で文科省は「実際に記述を確かめる必要がある」として審査対象の全国10校に対し、9月末までに授業で使っている教科書の提出を求め、3日までに10校分全ての教科書が届いた。
文科省によると、教科書はいずれも「2011年3月25日再版発行」とされ、従来の教科書にあった大韓航空機爆破について書かれたコラムなどが差し替わっていた。
文科省は、ハングルで書かれた文章を詳しく比較していないが、学校側が拉致問題や大韓航空機事件の記述を削除・訂正したとしている「改訂版」が提出されたとみている。
これに対し、学校関係者は「文科省に提出されたのは『赤本』と呼ばれる教科書指導書だ」と証言。同書は教員指導向けに用意された補助資料にすぎない。さらに別の関係者によると、この資料の巻末には、削除したはずの拉致や大韓航空機爆破についてのページ索引が残っていた。
これまでに西日本など多くの学校で改訂版が使われていなかったことが明らかになっている。朝鮮学校の教科書は各校の判断では内容を訂正できず、北朝鮮本国の検閲のもと、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)傘下の教科書編纂(へんさん)委員会が全国一律に編集する。
いずれの学校からも「ダミー版」といえる指導書が提出されたとみられることから、無償化審査に間に合わせるために朝鮮総連側が索引との違いも確かめることなく、にわか作りに指導書を編集・印刷し、提出した可能性が高い。
文科省は今後、教科書や提出書類を精査した上で、直接、学校を訪れ、授業などの実地調査を行う。ただ、教科書とほぼ同じ体裁の指導書は存在するため、調査のときだけ授業で使うことも可能だ。偽装工作がさらに強まる恐れもあり、調査のあり方そのものが問われそうだ。