全国柔道事故被害者の会:来年度中学校武道必修化、安全は守られるのか 指導者講習の徹底を−−都内で勉強会 /静岡
毎日新聞 2012年2月8日(水)10時33分配信
「安全は守られるのか」−−。今年4月から中学校で武道が必修化されることを控え、柔道中の事故で子供を亡くした遺族らで作るを招いた勉強会が7日、東京都内で開かれた。出席者からは不安視する声が続き、悲劇を繰り返さないために指導者講習の徹底など国に万全の対策を求めた。【平塚雄太】
勉強会は衆議院第1議員会館を会場にして、国会議員らが主催。文部科学省の担当者も出席した。
10年7月に函南町立函南中学校の柔道部練習で当時12歳の長男、礼於(れお)君を亡くした沼津市の小川智恵美さん(41)が講演し、「礼於は『気持ち悪い』と最後の言葉を残し倒れた。今もつらく苦しい日々が続いています」と声を震わせた。礼於君の事故では、三島署が1月、している。
智恵美さんはさらに、「4月から次男も中学に入るが、今のままでは次男も殺されると思ってしまう」と話し、必修化に向け対策が不十分だと訴えた。
スポーツ医学に詳しい神奈川県立足柄上病院の野地雅人医師は、「ほとんどの(柔道)指導者が脳しんとうの知識がない。根性論の誤った指導で多くの子が犠牲になっている」と述べた。
被害者の会によると、83年〜2010年の28年間で、中学、高校生114人が柔道事故で死亡している。村川義弘副会長は、「日本の3倍の柔道人口がいるフランスでは近年事故は起きていない」と指摘。フランスのように、指導者に十分な安全講習をすべきだと話した。
全日本柔道連盟は、指導者の資格制度を13年以降導入する予定だ。だが、村川副会長は、「今までの指導者や学校教師は特例が認められているし、フランスより講習時間は少ない。やらないよりはいいが、今のままではまた必ず事故が起きる」と話し、不十分だと批判した。
出席した文部科学省スポーツ・青少年局の担当者は、「有識者会議を開き、安全第一で話し合いを進めている」と話した。
この後、被害者の会のメンバーは、同省を訪れ、安全確保を求める要望書を提出した。
…………………………………………
■ことば
◇武道必修化
安倍晋三内閣当時の06年12月に教育基本法が改正され、これを受けて07年9月、文部科学相の諮問機関・中央教育審議会が実施に大筋合意した。12年4月から、中学1・2年生は武道とダンスを必修として学ぶ。新学習指導要領は武道として柔道、剣道、相撲の三つを明記したが、地域の実情に応じてなぎなたなども認めるとした。
2月8日朝刊