朝鮮学校生の正恩氏礼賛 思想教育強化、鮮明に 北、柔軟化装い 人権置き去り

朝鮮学校生の正恩氏礼賛 思想教育強化、鮮明に 北、柔軟化装い 人権置き去り
産経新聞 2012年3月16日(金)7時55分配信

 朝鮮学校生の北朝鮮公演で新指導者、金正恩(キム・ジョンウン)氏を礼賛する映像から思想教育強化の傾向が明らかになった。学校側は無償化、補助金獲得に向け、肖像画を下ろしたり、訂正版教科書とする教本を提出したりする表面上柔軟な対応を装っている。日本で学ぶ子供たちに過度の思想教育を許していいのか−。政府や自治体の無償化議論は、中心であるはずの生徒らの人権が置き去りにされかねない危うさをはらんでいる。

 「朝鮮総連(在日本朝鮮人総連合会)と一線を画したことになっていない」

 大阪府の松井一郎知事は15日、朝鮮初中級(小中)学校8校分の補助金約8100万円の支給取りやめに言及した。(HP)の記述を受けた発言だ。

 HPは「朝鮮学校の運営は、朝鮮総連の指導のもと教育会が責任を負っている」と明記。運営を担うべき朝鮮学園理事会を骨抜きにして朝鮮総連直轄の教育会が裏で運営してきた。朝鮮総連との一体化を裏付ける仕組みとして再三指摘されてきたものだ。

 府は橋下徹前知事時代に厳格な補助金基準を定めたが、「朝鮮総連と一線を画す」という根源的基準は「学校との間に役員の兼務はない」などとして特段問題視されなかった。

 関心が集中したのは「目に見える」金正日(ジョンイル)総書記らの肖像画の撤去だ。府は職員室にも肖像画を掲げていなかった1校を除いて予算措置しなかったが、学校側は年度末間際に「職員室からも撤去した」と8校分の補助金を申請してきた。

 ところが、知事は土壇場でこの申請を白紙に戻した。ようやく肖像画という象徴ではなく、実態に目を向けたことになる。

 しかし、肖像画をめぐっては、そもそも金総書記が生前、「教室ごとに写真(肖像画)を飾る必要はない」と指示していた。学校側はこの“遺訓”を全うしたにすぎない。

 神奈川県では、学校側が拉致事件についての教科書記述を訂正したとして補助金継続を決めたが、その最中に神奈川朝鮮中高級学校校長が金正恩氏への忠誠を宣言していた。

 無償化については、審査基準そのものが教育の中身を問うていない。昨年8月の菅直人前首相の辞任間際の指示で審査が再開され、遅くとも年度内には終了するとみられていたが、結論が出る見通しはない。

 朝鮮学校生の公演映像を入手したNPO(民間非営利団体)「救え!北朝鮮の民衆/緊急行動ネットワーク」(RENK)代表の李英和(リ・ヨンファ)関西大教授は「正恩氏らへの過剰な礼賛は表面的なソフト化とは真逆の方向に向いている。国や自治体は本当に子供たちのための教育が行われているのかという点に立ち返るべきだ」と指摘している。(桜井紀雄)

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