<論文不正>元東邦大准教授の疑惑、00年に指摘…米専門誌

<論文不正>元東邦大准教授の疑惑、00年に指摘…米専門誌
毎日新聞 2012年6月25日(月)2時32分配信

 麻酔学に関する論文193本に不正が疑われている元東邦大准教授の藤井善隆医師(52)に対し、米国の専門誌が00年にも不正の疑いを指摘していたのに、藤井医師が97〜05年に講師で在籍した筑波大は疑惑について調査していなかったことが分かった。不正の有無について当時適切な調査がなされていれば、これほど大規模な疑惑に発展しなかった可能性がある。【久野華代】

 海外の専門家が、不正を疑う文章を00年4月発行の米専門誌「アネステジア&アナルジジア(麻酔学と無痛学)」に投稿した。

 藤井医師が94〜99年に複数の専門誌に発表した麻酔薬の効果に関する論文47本を分析し「副作用のデータが極めて均一で不自然」と指摘、不正を示唆した。

 藤井医師は、同誌に「データは真実だ」と主張する反論を寄せ、掲載された。だがデータの根拠などは示されておらず、真偽は不明なままとなった。筑波大の関係者によると、この投稿がきっかけとなって藤井医師への疑惑が学内に広がったというが、大学によると、学内で調査は行われなかった。藤井医師は05年に東邦大へ移籍。東邦大で執筆した論文のうち9本に今年2月、再び不正の疑いが浮上。藤井医師は8本を撤回し大学から諭旨退職処分を受けた。

 同誌は今年3月に「00年の論文不正告発に対する本誌の対応が不十分だった」との謝罪記事を、スティーブン・シェイファー編集長名で掲載。シェイファー氏は毎日新聞の取材に対し「00年当時は不正の告発の前例や対応するための指針などもなく、編集部はさらなる解明に消極的だった」と説明している。

 藤井医師の論文を巡っては今年4月、国内外23の専門誌が連名で、撤回済みの8本を含む91年以降の193本に「データの捏造(ねつぞう)や改ざんなど不正の疑いがある」として、かつて在籍した7機関に調査を要請。日本麻酔科学会が調査特別委員会を設置し、6月末をめどに調査を進めている。筑波大時代の論文で今回、調査対象になっているのは99本に上る。

 筑波大は取材に対し「現在、大学内で00年当時の対応を含めて調査を進めている。調査が終わったらきちんと結果を公表する」としている。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする