青森山田高野球部員死亡:損賠訴訟 「法廷で真実明らかに」 学校に不信募らす遺族 /青森

青森山田高野球部員死亡:損賠訴訟 「法廷で真実明らかに」 学校に不信募らす遺族 /青森
毎日新聞 2012年6月26日(火)11時40分配信

 なぜ死ななければならなかったのか、息子の最期が知りたい−−。青森山田高(青森市)の硬式野球部寮で昨年12月、1年生の男子部員(当時16歳)が当時2年の少年(18)=暴行容疑で書類送検、自主退学=から暴行された後に急死した事件。両親は25日、少年と高校側などに対して大阪地裁で始まった損害賠償訴訟の初弁論後、毎日新聞の取材に「調査と報告を再三求めたが、誠実に対応してもらえない。真実を明らかにするには、法廷で争うしかなかった」と胸のうちを語った。【鈴木久美、宮城裕也】
 ◇校長「できることはした」
 大阪府内の生徒の実家。仏壇には青森山田の野球帽、生徒の部屋には青森山田のユニホームやかばん、グラブが整然と並んだまま。
 「まだ片付けられない。部屋に入ると思い出すから」と母親(46)は話す。小学2年から野球を始め、中学では副主将。部屋にある写真の中では、いつも輪の中心でおどける姿が写っている。「明るく、ひょうきん者。決して他人の悪口を言わない子でした」
 府内の高校に進む予定だったが、中学3年の11月になって急に青森への誘いがあった。両親は「遠すぎる」と初め難色を示したが、「行きたい」と強く望んだという。
 「甲子園に出られなくてもいい。人間的に成長してきなさい」。両親は息子を青森に送り出した。「大丈夫や。先輩も優しくしてくれておもろい」。昨夏の帰省の際には学校や寮生活を楽しんでいる様子を語っていた。
 しかし突然、帰らぬ人に。事件翌日、大阪から駆けつけると、青森署の遺体安置所に息子の姿があった。「今でも息子が元気で青森にいるように思ってしまう。現実に引き戻されるのがつらい」。父親(52)は取材中、号泣した。母は事件の電話を受けた寝室では寝られず毎晩、仏壇脇に布団を敷いている。
 両親は12月の記者会見後に明らかになった事実と謝罪をホームページに載せるように要請。高校側と交渉して掲載文もまとまった。しかし学校側は掲載せず、2月20日に「今後は顧問弁護士と連絡を取ってほしい」と伝えてきたという。
 25日の開廷数十分前になって、木村雅大副理事長らが、大阪地裁のエレベーター前で両親の弁護士に手紙と再発防止の報告書を渡してきたという。手紙には、これまでの公式戦自粛をやめ、夏の青森大会に出場する意向が書かれていたが、口頭での説明はなかった。
 両親は「当初は批判する気持ちはなかったが、誠意ある対応が見られない。真相が分からないまま出場するのが果たして教育的なのか」と非難した。
 同校の花田惇校長は「遺族には生徒の聞き取り結果を報告するなどできるだけのことをした」と説明。夏の大会には「残された生徒への教育的配慮から参加する方針」とした。26日の組み合わせ抽選会で参加申し込みをする。県高野連は「出場を止める材料がない」として、参加を認める方針。

6月26日朝刊

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