<京大元教授逮捕>公的研究費流用問題で、収賄容疑

<京大元教授逮捕>公的研究費流用問題で、収賄容疑
毎日新聞 2012年7月31日(火)13時29分配信

 京都大学大学院薬学研究科の元教授による公的研究費流用問題に絡み、東京地検特捜部は31日、元教授の辻本豪三容疑者(59)=6月28日付で辞職=を収賄容疑で逮捕した。東京都世田谷区の社長の木口啓司(62)、同社元営業部長の上田真司(53)両容疑者を贈賄容疑で逮捕した。

 元教授の逮捕容疑は07〜11年、同科発注の大型設備4件(計約2億2600万円)や随意契約に関し、同社に便宜を図った見返りに計約622万円相当の賄賂を受け取ったとしている。賄賂の内訳は▽同社のクレジットカードを使っての飲食など約476万円相当▽本人や家族の海外旅行代約146万円。贈賄側は07、08年分の時効が成立している。

 大学関係者によると、京大では原則として1000万円以上の入札で一般競争入札を実施し、学内に設置された策定委員会が仕様書を作成する。元教授は同社の入札案件で策定委員会委員を務め、入札情報を知りうる立場にあったという。

 元教授は人の遺伝子情報(ヒトゲノム)を新薬開発に応用する「ゲノム創薬科学」の専門家。02年5月に京大に着任する前から医療機器の発注などを通じて同社と付き合いがあり、架空取引で捻出した研究費などを管理させる「預け金」を任せていたとされる。【島田信幸、山田奈緒】

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<京大元教授逮捕>「研究の鬼がなぜ」同僚ら困惑
毎日新聞 2012年7月31日(火)13時35分配信

 「研究熱心で、不正をするような人には思えない」。最先端の「ゲノム創薬」の第一人者が、業者から私的な飲食代や海外旅行代の肩代わりを受けていたとして、東京地検特捜部に収賄容疑で逮捕された。京都大大学院薬学研究科元教授、辻本豪三容疑者(59)をよく知る大学関係者は口々に「信じられない」と漏らした。

 「『全ては研究の前にひれ伏す』と考えるような、猛烈に研究をするタイプだった」。京大の同僚たちは、研究者としての辻本元教授を「研究の鬼」と高く評価する。だが、「金(研究費)集めもうまい」と指摘する声も一部にあったという。

 医療関係者らによると、辻本元教授は北海道大医学部の出身。91年に着任した「国立小児病院・小児医療研究センター」(現国立成育医療研究センター、東京都世田谷区)時代の業績が認められ、京大に教授として招かれたとされる。

 京大では、病気に関連した特有の遺伝子の働きに着目して新薬開発に役立てる「ゲノム創薬科学」の講座を担当。10年3月にはノーベル化学賞受賞者の田中耕一・島津製作所フェローと共同で、がんやアルツハイマー病の治療法の研究や創薬の開発を進め注目されていた。【吉住遊】

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<京大元教授逮捕>もたれ合いの構図にメス
毎日新聞 2012年7月31日(火)15時0分配信

 京都大学大学院薬学研究科の元教授について、東京地検特捜部は「預け金」に象徴される業者とのもたれ合いの構図に贈収賄容疑を適用することでメスを入れた。背景には「研究継続が可能な予算を確保しておきたい」という研究者、「物品購入などで便宜を図ってほしい」という業者の双方の思惑がある。

 医学・薬学分野では大量の試薬を使った臨床実験を繰り返すため膨大な科学研究費(科研費)が必要となる。実験に使うラットを常時調達するだけでも年間数百万円の経費がかかるとされ、科研費の確保・運用は研究者の大きな懸案材料だ。そのため預け金は2、3年後まで見越した確保が可能になる魅力的な手段と言える。

 だが、科研費の多くは国からの助成で、預け金に回すことは目的外使用に当たり、補助金適正化法にも抵触する。それでも業者がリスクを覚悟して預け金を管理するのは、高額な物品を優先的に購入してもらえるという期待があるからにほかならない。今回の事件もその延長線上にある。

 研究者と業者のグレーな関係は預け金が表面化するたびに指摘されてきた。文部科学省は11年度から主に若手研究者を対象に、研究計画に応じて翌年度以降にも科研費を繰り越しできる制度を導入したが、適用の上限額は500万円で、大規模研究には必ずしも十分ではない。国は事件を機に、癒着の土壌を根絶するため、助成を巡る環境整備を一層進める必要がある。【篠原成行】

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「屈指の研究者なぜ不正」 京大元教授 教え子ら衝撃
産経新聞 2012年7月31日(火)15時24分配信

 逮捕された京都大学大学院元教授、辻本豪三容疑者(59)は、人の全遺伝情報(ヒトゲノム)を薬の開発に応用する「ゲノム創薬」の分野で世界屈指の研究者と評価され、真面目で熱心な姿勢は称賛を受けていた。「なぜ不正に手を染めたのか」。同僚だった研究者は言葉少なに話した。

 「メタボリック症候群対策などで、新たな治療薬の創出が期待できるのではないか」。今年2月、肥満の原因解明につながる遺伝子の動きを突き止めた辻本容疑者は記者会見で、こう成果を語った。東京地検特捜部が業務上横領容疑で家宅捜索に乗り出したのは、そのわずか3カ月後だった。

 辻本容疑者は、昭和53年に北海道大学医学部を卒業後、薬理学の基礎研究に従事。平成14年に京都大大学院薬学研究科の教授に迎えられ、後継者の育成にも尽力。指導を受けた研究者は「厳しい態度にも優しさがあった」と振り返る。

 京大が設置した最先端創薬研究センターではセンター長も務め、ノーベル化学賞受賞者の田中耕一氏とも連携し研究を進めた。元同僚も「ギャンブルや夜の付き合いを嫌っていた。金に執心する様子はなかった」と首をかしげる。別の教授も「バイオ製薬の部門で日本トップの研究者。名声を失う危険を冒してまで、なぜ不正に手を染めたのか」と渋い表情だった。

 京大薬学部には「辻本教授研究室に入りたい」と入学してくる学生も少なくなかった。京大3年の男子学生(21)は「教育熱心な印象。学部の授業でも、親身に教えてくれて人気があったのでとてもショック」。同大は31日夕、会見を開いて説明する予定。

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京大元教授逮捕、副学長ら謝罪
京都新聞 2012年7月31日(火)23時19分配信

 薬学研究科の元教授辻本豪三容疑者(59)の逮捕を受け、京都大は31日、副学長らが会見し、謝罪した。島津製作所の田中耕一シニアフェローを中心に進めている共同プロジェクトは「撤退も含めて国と今後について協議する」とした。
 プロジェクトは島津製作所が世界最高性能の質量分析システムを開発、京大は元教授を中心に、がんやアルツハイマー病の早期診断や治療薬探索を進める計画で、国から40億円の助成金を受ける予定だった。佐治英郎薬学研究科長は「別の研究者を立てて継続できないか内閣府と相談してきたが、逮捕を受け、撤退するかどうかも含めて相談したい」と説明した。
 辻本容疑者に関係する備品購入などの調査に加え、架空の発注をして研究費を不正にプールする「預け金」の再調査を全学で始めたことも明らかにした。退職者や業者も対象とし、虚偽回答が分かれば懲戒や取引停止処分を課す。
 辻本容疑者の処分について塩田浩平副学長は「過去にさかのぼって適用できる。詳細が分かり次第、懲戒処分に当たるか検討する」と説明し、退職金の支払いを停止していることを明かした。

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