大津いじめ事件 自殺した子供が入学説明会で大写しになった
NEWS ポストセブン 2012年8月10日(金)7時6分配信
滋賀県大津市のいじめ自殺問題の裏には、徹頭徹尾、自己保身と組織防衛で動く「お役所の論理」があった。ジャーナリストの鵜飼克郎氏が、役人たちの“事なかれ主義”の実態を報告する。
* * *
昨年10月と11月の2回、学校は全生徒対象のアンケート調査を行なった。調査結果から市教委は「いじめはあったが、自殺との因果関係は不明」という都合のいい見解を発表。今年7月に公になって問題となった「葬式ごっこ」「自殺の練習」などの内容は公表されなかった。
調査における事なかれ主義は生徒たちの証言からわかる。「アンケートは名前を書いても書かなくてもいいと言われた。先生は名前を書いた人は後で詳しく話を聞きたいと言っていた。それでも名前を書いた人はたくさんいたし、私も書きました。先生から呼ばれればいじめのことをちゃんと話そうと思っていたけど、呼び出しは一切なかった」(中2女子)
実名を書いた生徒たちの勇気は黙殺された。
文科省の指針に沿って市教委はアンケートを行なわせたが、生徒が実名を書き、さらに直接見聞きした情報のみが聞き取り調査の対象になった。また、加害者3人からの聞き取りは事前に保護者の同意を得ることにしたところ1回しか同意が得られず、いじめを否定され調査は終了した。
真相の究明より、「文科省の指針に沿って調査をした」というアリバイ作りが優先されたと言われても仕方ない。行政機関として手続きに瑕疵がなければいいという発想だからこうなる。
調査が打ち切られた4日後の昨年11月6日、澤村憲次・大津市教育長はオーストラリアのモスマン市へ出発した。大津市訪問団の一員として3泊5日の海外視察だった。帰国後、同17日の市教委定例会議での澤村教育長の報告では、「モスマン市の皆さんと交流を深めることができました」という視察の話が先にあり、自殺の件は最後に回された。
しかも会議の議事録によれば、「先月11日に発生した市内中学生の死亡事故に関わって、(中略)家庭との連携、あるいは、教職員の協同性について、私のほうから指導したところです」という表現で、いじめはおろか自殺であることさえ印象づけない“役人答弁”だった。
以後、事件は「過去のもの」として扱われた。この春に皇子山中学に入学した1年生女子の母親が言う。 「今年2月頃に入学前説明会があり、学校紹介の映像を見せられました。クラブ紹介で卓球部の映像が流れた時、自殺したお子さんの練習風景が大写しになったんです。それもかなり長い時間でした。隣に座っていたお母さんと『こんなん映していいの』と話したのを覚えています」
この母親は自殺した生徒と小学校時代の学童保育で顔見知りだったが、学校側の配慮のなさに驚いたという。
※SAPIO2012年8月22・29日号
——-
教諭に暴行、重傷負わす いじめ関与の生徒 大津・中2自殺
産経新聞 2012年8月10日(金)7時55分配信
大津市の中2男子自殺問題で、男子をいじめていたとされる同級生の1人が今年5月、女性教諭に暴行し、重傷を負わせたにもかかわらず、学校と市教委は警察に報告していなかったことが9日、分かった。
市教委関係者によると、5月下旬、同級生が学校体育館で暴れていたため、女性教諭が止めに入ったところ手を殴られて小指を剥離骨折し、約1カ月の重傷を負った。学校側は当日と6月上旬の2回、女性教諭や校長ら複数の教員が集まり協議したが、同級生が反省しているなどとして警察に報告しないことを決めたという。
一方、市は男子へのいじめの実態を調べるために立ち上げる外部調査委員会の委員に、大阪弁護士会の横山巌弁護士▽京都教育大教育支援センターの桶谷守教授▽立命館大の野田正人教授(教育臨床論)の3人を起用する方針を決めた。
—–
女性担任にも暴行、けがさせていた加害者…大津
読売新聞 2012年8月10日(金)8時8分配信
いじめを受けていた大津市立中2年の男子生徒が昨年10月に自殺した問題で、加害者とされる同級生の1人が今年5月、中学校内で担任の女性教諭に暴力を振るい、けがを負わせていたことが、関係者への取材でわかった。
市教委によると、学校側は、「本人は反省し、生徒指導の範囲で対応している」として、被害届を出していないという。
県警はいじめに関する一連の捜査でこの暴行についても把握。けがが重傷だとして、担任に、傷害容疑で被害届を出すよう求めたが、「学校が被害届を出さないと決定した」などとして応じなかったという。
市教委によると、学校は、暴行があった当日と約1週間後に、それぞれ校長や生徒指導担当教諭らによる会議で対応を協議、市教委には、約3週間後に報告した。
—–
いじめ生徒?が教諭暴行、重傷 大津中2自殺
京都新聞 2012年8月10日(金)10時39分配信
大津市で昨年10月、中学2年の男子生徒が自宅マンションから飛び降り自殺する問題があった中学校で、今年5月、教師が3年の男子生徒から暴行を受け、重傷を負っていたことが9日、関係者への取材で分かった。暴行した生徒は、自殺した男子生徒をいじめていたとされる同級生で、学校側は警察に被害届を出していないという。
関係者によると、大津市内の中学校で今年5月、教師1人が、暴れていた3年の男子生徒1人を止めに入ろうとした際に暴行を受け、小指に全治1カ月のけがを負ったという。
教師に重傷を負わせた生徒は、亡くなった男子生徒をいじめていたとして遺族から暴行などの容疑で刑事告訴されている同級生3人のうちの1人だという。
学校側は、この暴行について職員会議を開き、対応について議論したが、警察への被害届は提出しない方針を決めたという。
同中の教頭は「学校内であった子どもたちのことは守秘義務のため答えられない」と話している。
—–
大津・中2自殺:いじめ問題めぐり、道教委メッセージ /北海道
毎日新聞 2012年8月10日(金)11時15分配信
大津市のいじめ自殺を受け、道教育委員会は緊急メッセージ「いじめをなくし、かけがえのない子どもの生命を守るために」を発表した。
児童生徒向けとして「いじめは人間として許されない」「見たり聞いたりしたら、先生や大人に伝えてください」と呼びかけている。このほか、教職員・家族向けもある。
道教委のホームページに掲載し、悩みは24時間対応のいじめ相談電話(0120・388256)に連絡するよう呼びかけている。【千々部一好】
8月10日朝刊
—-
中2自殺問題 外部調査委メンバー6人固まる 大津市が3人を起用方針
産経新聞 2012年8月10日(金)11時49分配信
大津市の中2男子自殺問題で、同市が、男子へのいじめの実態を調べるために立ち上げる外部調査委員会の委員に、大阪弁護士会の横山巌弁護士、京都教育大教育支援センターの桶谷守教授、立命館大の野田正人教授(教育臨床論)の3人を起用する方針を決めたことが9日、市関係者への取材で分かった。委員全員の人選が固まった。
市はすでに、遺族側が推薦した教育評論家の尾木直樹法政大教授(臨床教育学)ら3人の起用する方針を決めている。今月下旬に6人で第1回委員会を開く。
今回の3人は公平性を担保するとして、日本弁護士連合会、日本生徒指導学会、滋賀県臨床心理士会からそれぞれ推薦を受けた。
—–
大津・中2自殺:いじめ対策検討委設置 市教委、再発防止に注力 /滋賀
毎日新聞 2012年8月10日(金)15時20分配信
大津市で市立中学2年の男子生徒が自殺した問題で、市教委は9日、市いじめ対策検討委員会を設置した。いじめの未然防止、早期の発見・対応につなげるため、現行のいじめ対応マニュアルの見直しなどを行う。
中2自殺問題を巡って、越直美市長は直轄で男子生徒へのいじめの事実解明を目的とする外部調査委員会を近く設置する方針だが、市教委の検討委は再発防止策に注力し、すみ分けを図る。
メンバーは教育部次長や学校教育課長ら内部の12人。月2回開催し、来年1月をめどに報告書を作成。内容を来年度からの学校現場に反映させる。会議は原則非公開。必要に応じて教員や弁護士などから助言を得る。【千葉紀和】
8月10日朝刊
—-
大津いじめ加害生徒が教諭に暴行 学校側被害届出さず、また甘い対応
J-CASTニュース 2012年8月10日(金)19時2分配信
滋賀県大津市の市立中学2年の男子生徒がいじめを受けて自殺した問題に関連し、いじめの加害者とされる生徒の1人が担任の女性教諭に暴行し、けがをさせていたことがわかった。
教諭は手の指の骨を折ったという報道も出ているが、学校側は滋賀県警に被害届は出さなかった。いじめ事件の加害者に対する甘い対応に、反発の声が上がっている。
■「蹴り上げた足に手が当たり、結果的に負傷」
大津市教育委員会によると、2012年5月、いじめ加害者とされる生徒が学校内で暴れることがあった。女性教諭が止めに入ったが、生徒が抵抗して足を蹴り上げた際に、制しようとした手に当たり、結果的にけがを負ってしまった、という。
各紙報道では「小指の骨を折る全治1か月のけが」とされているが、市教委は詳しい症状については回答を控える、とのことだった。
重傷にもかかわらず県警に被害届を出さなかった理由については、どの事件についても学校側で事案の経過などを踏まえて届けを出す、出さないを決めており、今回は出さないという判断になったということだ。
いじめ問題が明るみになってからもこの「事件」を公表しなかったのは、直接関係はなく、あえて言うことではないと判断したからだという。県には事件後に報告しているので、約3か月後の今になって明るみになったことについては特に問題視していないというような口ぶりだった。
■市議会議員も「今朝の報道で知った」
生徒の暴行によって教員が骨折するというのは重大な校内暴力と思えるが、学校は被害届を出さなかった。学校や市教委は男子生徒が自殺した件でも加害者に対してあまり強く出ないような対応に終始していることもあり、インターネット上では「なぜ加害生徒が守られるのか」などと疑問の声が上がっている。
ある大津市議に話を聞いたところ、この暴力事件については8月10日の朝に報道で初めて知り、議会にも知らされていなかったという。10日17時現在、まだ市教委からの報告もないとのことで、「重大な事件なのになぜ」と憤っていた。
被害届が出されなかった理由については、この生徒に限らず、学校が被害届を出したら生徒が逮捕される、少年院に入れられるといった何らかの措置を受けるため、こうした状況をなるべく避けようしたのでは、と話していた。
—–
県教委「被害届提出を」 大津教師暴行 市教委対応を批判
京都新聞 2012年8月10日(金)22時39分配信
中学2年の男子生徒が自殺する問題があった大津市の中学校で今年5月、男子生徒をいじめていたとされる生徒の1人から教師が暴行を受け重傷を負った事案に関し、滋賀県教育委員会の河原恵教育長は10日、学校側が警察に被害届を出さなかったことは不適切だったとの認識を示し、「あらためて情報収集する」とした。
県教委は、市教委から6月末に問題行動報告書の提出を受けて事態を把握し「被害届を出すべきだ」と指導。だが、市教委と学校は「子どもと先生のこれまでの状況があり、出さないと判断した」と返答したという。
河原教育長は「けがをするような大きな暴力行為は警察との連携が必要。市教委はそれぞれの権限でやっているが、毅然(きぜん)とした対応を取るべきと思う」と述べた。その上で、「市教委に派遣している県教委職員からの情報を聞き、再度指導するかをあらためて判断したい」と語った。
また、地域住民が学校に入って子どもと関わる「学校支援地域組織(仮称)」の設置を、県教委として支援していく考えも示した。住民が図書館ボランティアや花壇作りなどをしながら、子どもから悩みを聞く。県内ではすでに同様の取り組みをしている学校があるが、未設置の大津市などに導入を働きかけるという。