埼玉・川越の中2暴行:1年時からいじめ 半年公表せず、市教委「人権に配慮」 /埼玉

埼玉・川越の中2暴行:1年時からいじめ 半年公表せず、市教委「人権に配慮」 /埼玉
毎日新聞 2012年9月14日(金)12時20分配信

 川越市の市立中学校で今年1月、当時2年生の男子生徒(15)が同学年の男子生徒3人から暴行を受け意識不明の重体になった事件で、男子生徒が1年生のころから繰り返し、いじめに遭っていたことが13日、川越市教委などへの取材で明らかになった。【中山信】
 市教委によると、被害生徒は昨年4月ごろ、体調不良などを訴えて学校を欠席することがあり、担任は生徒に「いじめられているのではないか」と声を掛けた。しかし、生徒が「大丈夫」と答えたため、いじめが背景にあるとは思い至らなかったという。
 1月の事件後、学校と市教委は「暴力事件」と判断。1月9日に臨時保護者会を開き、事件の概要などを説明したほか、同10日の全校集会で「命の大切さ」などを生徒に指導したという。
 しかし、被害生徒の母親からの要望を受け、11日に同学年の生徒を対象にアンケートを実施し、2月下旬に集約したところ、3人を含む同学年の生徒から被害生徒が「跳び蹴りをされていた」「けんかが多かった」「悪口を言われていた」などの情報が寄せられた。
 校長と市教委は3月26日に「事件前にいじめがあった」と確認。4月14日に被害生徒の母親に全員のアンケート用紙を渡し、「いじめがあったと認識できる」と報告した。
 この日の市教委の記者会見で、いじめを確認後半年近く公表しなかったことについて、新保正俊・教育指導課長は「被害者、加害者双方の人権や少年法に配慮した」と説明。新井孝次教育長は「被害者の保護者にも『明らかにいじめです』と申し上げており、隠すということではなかった」と釈明した。
 ◇県教育局に伝えず
 この問題で、川越市教委が3月にいじめの事実を把握していたにも関わらず、県教育局にいじめがあったことを伝えていなかったことが13日分かった。市教委は「規定はなく、報告すべきだと思わなかった」としている。
 県教育局生徒指導課によると、市教委からは暴行事件当日の1月5日に電話で連絡があり、2月10日には事件の概要をまとめた「児童生徒事故報告書」が届いた。学校と市教委はいじめがあったとの認識を3月下旬に共有していたが、県教育局には伝えていなかった。
 13日の報道でいじめを知った同課が同日昼に電話で市教委に確認し、いじめの存在を初めて知ったという。同課は理由について「いじめは実態把握に時間がかかる上、今回は当事者に話を聞けず、確定的な話ではないと避けたのでは」と推察し、「今後、市教委からどう情報を吸い上げるのか検討したい」としている。【林奈緒美】

9月14日朝刊

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