<大津市議会>いじめ防止に「子どもの役割」条例案
毎日新聞 2012年9月14日(金)2時48分配信
大津市立中学校2年の男子生徒が自殺した問題を受けて、同市議会の主要会派は、いじめを発見した子どもに学校などへの相談を求めた「子どものいじめ防止条例」案をまとめた。12月議会に提案し、成立する見通しだ。市議会関係者によると、制定されれば、いじめ防止に関して「子どもの役割」を明記した初めての条例となる。
条例案は「子どもの役割」として、「いじめを発見した場合(疑いも含む)及び友達から相談を受けた場合は家族、学校に相談する」とした。子どもは小学生から高校生までと定義している。
また、学校の責務として「いじめを把握した場合には、その解決に向け速やかに、組織的対応を講じなければならない」と定めた。保護者にも、いじめに気付いた時点で「速やかに市、学校、関係機関等に相談または通報しなければならない」としている。いずれも罰則規定などはない。
同市議会は自殺問題を受け、いじめ防止条例案を全会派でまとめることを決めていた。しかし、共産党市議団は「子どもの役割」の規定について、「子どもの行動を条例で押しつければ逆に追い詰めかねない。大津市の条例は全国への影響も大きい」と反対している。
一方、自民系など主要会派は「子どもの役割」を盛り込んで議会に提案する方針。条例案を検討してきた全会派による政策検討会議座長の北村正二市議は「いじめ防止のために、子どもが公共心、道徳心を持つのは当然だ。『子どもの役割』は議論して決めた規定で変更予定はない」としている。10月中旬から市民の意見も募り、12月議会に提案する予定。
いじめの防止を目的にした条例では、岐阜県可児(かに)市が条例案をまとめ、市議会で審議中だ。いじめに気付いた市民に学校などへの通報を求めているが、子どもに直接、要請する内容にはなっていない。【千葉紀和】
◇条例自体がいじめだ
男子生徒の自殺問題を調査する大津市の第三者調査委員会の委員で、教育評論家の尾木直樹法政大教授(臨床教育学)の話 条例で子どもの行動を規定するのは強者の論理で、それ自体がいじめだ。子どもは、いじめを止められなかったことに悩み、自責の念を持つのに、子どもの立場が全く分かっていない。いじめの防止は教師をはじめ大人や社会の責任であり、発達段階の子どもを同列に扱うべきではない。