大阪の中学校 生徒殴り合う動画発見 いじめ即断、速やか対応
産経新聞 2012年10月13日(土)15時5分配信
■全校アンケート/謝罪の場設ける
大阪府大東市の市立中学校で7月、2年の男子生徒4人が同級生の男子生徒2人に互いに殴ったり蹴ったりするよう強要し、その様子をインターネット上の動画投稿サイトに投稿していたことが13日、わかった。事態を把握した中学校はいじめと即断し、全校生徒へのアンケートを実施。加害生徒と保護者を交えた謝罪の場も設け、被害生徒側からも一定の評価を得た。大津市で起きた中2男子生徒の自殺などをきっかけに、いじめをめぐる対応の難しさが浮かぶ中、学校側が速やかに動いた事例として専門家も評価している。
関係者によると、男子生徒4人は7月10日、同級生2人に殴り合いをさせて撮影し、約1分間の動画3本に〈仲のいい○○と○○〉と2人の実名入りのタイトルを付け、2日後に動画投稿サイト「You Tube」に投稿。
動画には「やれ、やれ」と加害生徒が突き飛ばし、被害生徒2人が引きつった顔で殴り合う様子や、加害生徒の笑い声などが入っていた。
学校側は7月17日、被害生徒の保護者からの連絡をきっかけに事態を把握。校長が被害生徒や保護者と話し合い、保護者の要望に沿って全校アンケートの実施を決める一方、翌18日には被害生徒側と加害生徒側が面談する機会も作った。
アンケートについて、市教委は当初「噂が広がり、問題が大きくなる」「被害生徒が新たな傷を負うのでは」と懸念を示したが、校長は「真実を伝えなければ生徒も理解できない」と判断したという。
アンケートで「この行為(いじめ)についてどう思うか」「被害生徒はどのような気持ちだったと思うか」と問いかけたところ、生徒からは「(加害生徒は)一度相手の立場に立てばいい」「本人がいじめられていると感じたら『いじめ』だから、しっかりと受け止めるべきだ」といった回答が目立った。
「学校で起きてからアンケートとか遅い。いじめられた子はつらいだけ。もっと早く先生や生徒に気づいてもらいたかったと思う」と切実に訴える記述もあったという。
中学校では2学期に入った9月以降もいじめ対策を継続し、2年生の授業参観では保護者にも「親として子供に何を伝えたいか」を書いてもらった。校長は「学校にできる教育には限界があり、保護者も一緒に考えてほしい。家庭や児童相談所などとの連携も大切にしていきたい」と話している。
■「事実隠さず連携を」
大津市の中2自殺問題の第三者調査委員会メンバーで、和歌山大教育学部教授の松浦善満さん(教育社会学)の話「近年、学校が極度に多忙化していることもあり、生徒の問題に気付く教師の感性が劣化しているのではと危惧している。大津の事件でも男子生徒からSOSのサインが出ていたにもかかわらず、見過ごしたり、議論を後回しにしたりする状況があった。ただ、いじめに限らないが、子供の生活世界が日々変化しており、教師だけで解決するのは難しくなっている。校長など学校責任者がいじめの事実を隠さずオープンにすることで、保護者をはじめ、ソーシャルワーカーなどほかの専門職とも連携できるようになる」