いじめ:認知件数、4〜7月で1398件 生命・身体へ危惧10件−−県教委緊急調査 /栃木
毎日新聞 2012年10月25日(木)11時39分配信
県教委は24日、文部科学省のいじめに関する調査の県内分の結果を発表した。公立小中高校での認知件数は4〜7月だけで計1398件と、昨年度1年間の1157件を大きく上回った。特に小学校は754件(同438件)に上った。プロレス技をかけられけがをしたり、精神的に追い込まれてリストカットしたりしたケースなど、重大ないじめも10件あった。県教委は年内にもマニュアルを改定し、保護者・地域との連携を深め、教職員に周知徹底する。【長田舞子】
. 大津市で中学生が自殺した問題を受け文科省が実施した「いじめの問題への取組状況に関する緊急調査」。いじめの認知件数の内訳は、小学校754件(前年度438件)▽中学校576件(同627件)▽高校67件(同83件)▽特別支援学校1件(同9件)。「冷やかしやからかいなどを言われる」が70・2%で最多。「遊ぶふりをしてたたかれたり、けられたりする」が22・5%▽「仲間はずれや無視をされる」が16・9%。いじめ解消率は小学校85・4%▽中学校85・1%▽高校77・6%−−など。
私立学校についても報告され、認知件数は85件(前年度20件)で、公立校同様、大幅に増加した。
県教委は件数増の理由として、大津の事件の影響を挙げ「友人関係のトラブルなどいじめに発展する可能性があるものも『いじめ』と報告している。子どもや保護者の意識も非常に高まり、学校への相談や訴えが増加した」と分析している。
「重大ないじめ」は公立小学校で2件、中学校8件。うち中学校の2件は警察に被害届が出された。からかわれて教室を飛び出し一時行方不明になった小学生の事案や、中学校では「気に入らない」との理由で呼び出されて暴行を受けたり、けんかを強要されたり、無理やりプロレス技や柔道技をかけられてけがをしたケースがあった。また、中傷を受け精神的に不安定になりリストカットするようになった生徒もいたという。10件については警察や児童相談所、医療関係者などと連携してすべて解消したという。
「いじめなどに関する対応の仕方を保護者や地域住民に公表し、理解と協力を得るようにしているか」との問いには「いいえ」と回答した学校が多かった。今後は、年内をめどに改定するいじめ対応マニュアルの中で保護者や地域との連携の重要性や具体策を示し、研修などを通じて教職員に周知徹底するという。
◇「日常的な関わり重要」 現場の教師たち深刻な思い
深刻で根深いいじめの問題。教育現場からは、教師たちの深刻な思いが聞かれた。
50代の男性高校教諭は「学校には何か問題が起きたときに表に出したくないという体質がある」と指摘する。「(いじめを)隠すのではなく、文科省や教育委員会に伝え、早期に対応してもらうべきでは」と話す。
身の回りでは保護者との信頼関係が不十分だと感じているという。「親が子どもをかばって事実を受け止めず、学校を『敵』にすることで親子関係をつなごうとする家庭もある」と打ち明けた。
一方、30代の男性中学校教諭は「文科省や教委の対応は事後的なもので、いじめ防止には直接結びつかないのでは」とする。だからこそ「日常的な教師と生徒との関わり方が重要で、被害を受けた生徒たちが送るちょっとしたサインをいち早くキャッチしなければならない」と注意しているという。
この教諭は「いじめは犯罪行為。関わった子どもの人生に大きな影響を及ぼすことを直接、間接的に全力で生徒に伝えることが大切だ」と言い切る。「いじめにより、担任する生徒が命を落とすようなことがあれば、辞めるべきだと思います」と、覚悟のほどを語った。
10月25日朝刊