<品川中1自殺>調査委参加の父「ここまでひどい目に…」

<品川中1自殺>調査委参加の父「ここまでひどい目に…」
毎日新聞 2012年11月10日(土)12時30分配信

 東京都品川区の区立中学1年の男子生徒(12)が今年9月に自殺した問題で、遺族として初めて調査対策委員会のメンバーに入った男子生徒の父親(40)が毎日新聞の取材に応じた。父親は「情報を開示してもらい、息子に何が起こっているのか知ることができてよかった」と意義を話した上で、「約1カ月で報告書がまとまっているが、あまりにも短い時間。詰め切れていない部分もあり、引き続き調査を求めている。一日でも早く、全てが明らかになるのを待ちたい」と話した。

 一人息子の死から、約1カ月半が過ぎた。「ずっと3人で一緒にきた。この1カ月は原因究明に必死だったが、息子が帰ってこない現実はむなしい」。母親(41)は人に会えず、朝起きると息子がいないことに震え、泣いているという。

 亡くなる日の朝、息子が「いってらっしゃい、頑張ってね」と声を掛けてくれ、「おう」と返した。それが最後の会話になった。

 報告書によると、いじめは小学校の時からあった。中学に進学しても、同級生が「小学校で『きもい』と言われていた」と吹聴し、いじめが始まった。同じクラスの男子生徒6人が中心になって、殴る、蹴るなどの暴力をふるった。クラスのほとんどの生徒が「きもい」「うざい」などの言葉を男子生徒に浴びせた。給食の時も席を離したり、ばい菌扱いしていた。

 大津市のいじめをきっかけに、今年7月に実施した記名式のアンケート。中学校の説明では、「周囲で困っている人は?」という設問に、男子生徒の件は誰も書いていなかった。

 7月の三者面談で、母親が担任に相談したが、担任は記憶にないと言い、すれ違っている。父親は「まじめに子どもに向き合い真摯(しんし)に対応してほしかった」。

 4月以降、欠席はゼロ。文房具が壊された時、母親に「替えてほしい」と言ってきた。誰がやったのか聞いても「分からない」と、それ以上は言いたがらなかった。「気を使う性格だから。相当つらかったろうに、最後の最後まで一言も口にしなかった」

 報告書をまとめ終わり、父親は「ここまでひどい目にあわされていたのかというのが正直な印象。つらいのをよく笑顔でやり過ごしていたなと思う」と声を絞り出した。まだ知りたいことがあり、追加の調査を文書で依頼し、返答を待っている。父親は「いじめは立派な犯罪なのに、加害者にはそういう認識がない。全ての大人が、いじめとくくらず、暴行罪や傷害罪などの犯罪行為であると、子どもたちに教えてほしい」と力を込めて語った。【大沢瑞季】

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