校長の権限も顧問に及ばず 浮き上がるバスケ部の“聖域化” 桜宮高2自殺
産経新聞 2013年1月15日(火)10時31分配信
大阪市立桜宮高校(都島区)の男子バスケットボール部主将だった2年の男子生徒=当時(17)=が男性顧問(47)の体罰後に自殺した問題は、これまでの市教委の調べなどから、顧問率いるバスケ部が校長の指導が及ばない“聖域化”していた実態が浮かび上がっている。市教委による8日の自殺公表から1週間。学校に無届けの部独自の「寮」の存在や、人事ルールを逸脱した顧問の在籍期間の長期化…。常態化が発覚した体罰の背景には、学校現場の統治の乱れが透けてみえる。
学校現場の最高責任者である校長の指導が効力を発揮しなかった象徴は、学校に無届けのまま数人の男子部員たちが学校近くの「寮」と称するマンションで共同生活を送っていた問題への対応だ。
同校の佐藤芳弘校長は昨年9月上旬、同校教諭から「寮」の存在について報告を受け、「未成年者だけでの共同生活は不適切」として顧問に改善を指導。しかし、顧問は「何も言わなかった」(佐藤校長)という。
10月19日、「寮」で暮らす男子部員がバイクの無免許運転で摘発されたのを契機に佐藤校長が再度指導し、顧問も部員を退去させたが、校長の指導は1カ月余りの間、顧問に無視された格好となった。
今月13日に会見した佐藤校長は記者団からこの点を問われ、「私が確認を怠っただけ。(指導は)通じていると思う」と答えるのが精いっぱいだった。
バスケ部が“聖域化”する要因の一つに、顧問の在籍期間の長さを指摘する声がある。
市教委の基本方針では7〜10年で異動させるとしているが、顧問は新任採用された平成6年から18年間、同校に在籍。同校の教員の中では最古参だった。
この長期在籍が問題視されたこともあった。前校長(61)は産経新聞の取材に「在任期間が長いので、顧問本人に『転勤があると思っておいてくれ』と伝えたことがある」と証言。実際に後任探しにも乗り出した。
ただ、顧問と同じく、体育教師の資格を持ちながら、バスケ指導で全国大会出場など遜色のない実績を持つ人材を見つけることは困難だったという。
バスケ部強化に向け「残留希望」を出し続けていた“カリスマ指導者”の人事は事実上、校長でさえも手が付けられなかった実態がうかがえる。
自殺問題を受け、市の外部監察チームが今後、調査に乗り出すが、学校現場での統治の実態まで踏み込めるか注目される。
一方、同校の佐藤校長は自殺問題などを考慮し、13日に各部顧問に活動の自粛を指示。14日から当面の間、練習や大会への出場を見合わせるという。