川崎・いじめ自殺、両親が校長研修で講演へ
カナロコ 2013年1月24日(木)14時0分配信
2010年6月、「友人をいじめから救えなかった」と遺書を残し、川崎市内の自宅で自ら命を絶った篠原真矢(まさや)さん=当時(14)=の父宏明さんと母真紀さんが29日、市教育委員会主催の校長研修で講演する。市教委が遺族に講師を依頼するという「画期的なケース」と評価する宏明さん。こうした行政の取り組みが他都市へ広がることに期待し、「遺族として今伝えるべきこと」を語る。
「意志を曲げない、矢のように真っすぐな人間になってほしい」。真紀さんから1文字を受け継いだ「真矢」の名には、両親のそんな願いが込められている。
両親の願い通り、曲がったことが大嫌いで人の痛みに敏感な人間に育った真矢さんはしかし、中学3年の時に自宅で亡くなった。友人だけでなく、自身もいじめを受けていたことがその後の学校や市教委の調査で分かった。
3年に進級後、自身へのいじめは落ち着いていたが、友人は標的とされ続けた。「自ら命をなげうってでも、いじめがある現状を変えたかったのだろう」。警告と捉えるわが子の死を教訓にしなければならないと、両親は強く思う。
子の苦しみをどこまで想像できたか。子どもたちを生きづらい世の中にしているのは誰か。宏明さんは、自分たちや教員ら大人のいじめへの感度の低さが、悲劇を生んだと断言する。
「いじめは人ごとではない。大人の責任だということを自覚しないと、同じ悲劇が繰り返される。それを教えてくれたのは真矢であり、自殺していった子どもたちです」。市立学校の校長172人を前に、そう伝えようと思っている。
市教委指導課の安部賢一担当課長は「篠原さんの経験をわが身に置き換え、子どもたちとの向き合い方をじっくり考える時間にしたい」と話す。
真矢さんの自殺後、市教委はいじめの知識や対応法を盛り込んだ教員向けリーフレット2冊を作成。学校が自発的にいじめ問題と向き合う「月間」を毎年6〜7月に制定し、教員への研修にも力を入れている。
一方で、「こうした取り組みが注目されるのは本意ではない」と安部課長。「川崎の生徒が亡くなったのは厳然とした事実。その重みを受け止め、パフォーマンスではない地道な予防策を取っていくことが市教委の役割」と話している。