教職員らの早期退職 「県が悪い」と疑問の声多数 埼玉
産経新聞 2013年2月2日(土)13時41分配信
埼玉県職員や教職員の駆け込み退職を招いた退職手当引き下げ問題。1月22日の問題発覚以降、「聖職者としてのモラル不足」か、「制度上の問題」かで議論を呼んだ。結局、31日、県内で120人の教職員が早期退職を選んだが、後味の悪い結末に教育現場だけでなく、県民や識者からも疑問の声が上がっている。
この問題で、31日までに埼玉県に寄せられた県民からの意見は126件。「引き下げを早めた県が悪い。県の責任だ」「教員を悪者にした人気取りの政策だ」など108件が県を批判するもので、「無責任。使命感を持ってほしい」など教員批判は18件にとどまった。
上田清司知事は記者会見で早期退職を選んだ教員に対し、「無責任のそしりは免れない」などと不快感を示し、時期設定についても「(4月1日にすれば)39億円余分にかかる」と強調。ただ、「(退職者数は)予想よりも3倍くらいは多かった」と自ら見通しの甘さを認めたともとれる発言もあった。
県の対応については有識者からも批判の声があがる。学習院大学経済学部の脇坂明教授(人事管理)は「退職者が相次ぐのは合理的。企業であれば退職者の見通しを細かく見積もる。制度を変える際は影響を読む必要がある」と話す。
県では、定年となる誕生日を迎えた時点で退職金の額が決まることも早期退職に拍車をかけたとみられる。東海大学政治経済学部の川崎一泰准教授(財政学)は「教員は年度末まで勤めないと満額受け取れないようにするべきだ」と指摘した。
教頭が1人退職した中学校長は、親の介護などの事情があると聞き、引き留めきれなかったという。「周囲の負担は増えるが支障はない。県のせいで現場は混乱する」と憤る。
ただ、教職員の退職金は世間一般より高めの設定。ある県幹部は「社会全体で給料が減っているのだから、教職員も減額を受け入れて然るべき」とため息をついた。前島富雄教育長は問題を総括し「ご心配をかけたが、該当校では後任も決まり、授業も支障なく行われる見通しが立った」とコメントした。