鳥栖のいじめ:「危機意識が欠如」 被害者団体、学校対応を批判 /佐賀
毎日新聞 2013年3月23日(土)15時53分配信
鳥栖市立中の1年生男子生徒(13)が同級生らからいじめを受け、約70万円を脅し取られた問題が発覚した。全国で明らかになる深刻ないじめの実態にどう対処したらいいのか。県外のいじめ被害関係者に話を聞くと「いじめに気づかず未然に防げなかった責任を徹底分析しなくては、いじめはなくならない」と、教育現場への厳しい指摘が続いた。
「加害生徒の更生は、ペナルティーなくしてありえない」と訴えるのは、NPO法人「全国いじめ被害者の会」の大沢秀明代表(68)=大分県佐伯市。96年に当時中学3年生の四男をいじめが原因の自殺で亡くして以来、全国で講演活動をするほか、文部科学省や各県教委に学校での安全配慮義務の徹底を要請してきた。
今回の問題では、中学校長は21日の記者会見で「子供は成長するもの。学校の中で失敗や過失を反省させる指導をしていく」と述べ、出席停止などの措置を否定した。
これに対し、大沢さんは「本当に加害者の更生を考えるのであれば、行為の重大さを認識させ導くことが教育者の義務」と指摘。「出席停止などの措置をせねば、被害者も加害者も守ることはできず、子供がいじめが許されないことに気づくことができない」と、学校対応を批判した。
いじめの発覚後の鳥栖市教委の対応について「全国学校事故・事件を語る会」の小西史晃さん(37)=兵庫県姫路市=は「第三者委員会を設けるべきだ」と話す。自身も岡山県津山市の私立作陽高校に在学中、学生寮で寮生から集団暴行を受け後遺症が残り、02年に学校を相手取り損賠訴訟を起こした。
小西さんは「事件の大小を問わず、いじめ問題の解決に向けて速やかな第三者委員会の設置を文科省が指針で示している」とした上で「これだけ被害が重篤な今回の問題で、調査権限を持った人を置かなくては事実解明は難しい。第三者委員会を設けないのは時代錯誤」と指摘する。
さらに「自分の学校にいじめがないと構える教師の危機感の欠如がいじめの要因の一つ」と教職員の資質の向上の必要性を訴え「何が問題だったのかを真剣に反省、分析しなくては、被害者の学校復帰につながらない」と訴えた。【田中韻】
3月23日朝刊