奈良・支援学級暴行:指導か暴力か 調査委設置指示→市教委が保留 市長の対応と温度差 /奈良

奈良・支援学級暴行:指導か暴力か 調査委設置指示→市教委が保留 市長の対応と温度差 /奈良
毎日新聞 2013年3月26日(火)16時38分配信

 ◇報告書「事実と違う」 両親が憤慨
 奈良市立小学校の特別支援学級に通っていた発達障害の男児(13)への暴行容疑で、元担任の50代の男性教諭が書類送検された事件を巡り、市長と市教委との間で、対応に温度差が出ている。市教委は10年度に暴行や体罰ではなく「行き過ぎた指導」として処理。一方、警察は「暴力を振るった」として送検し、事実関係が大きく異なっている。仲川げん市長が送検直後、市教委に調査委員会の設置を指示したが、市教委は「地検の判断を待つという選択肢もある」とし、具体的な動きをみせていない。【伊澤拓也、千脇康平】
 「意見の相違があるので、できるだけ早く第三者に調査してもらうよう(市教委に)指示した」
 仲川市長は今月7日、報道陣に事件の対応を問われ、外部有識者による調査委の設置を明言した。しかし、市教委は「地検が不起訴処分とした場合、調査の必要性はどうなるのか。有識者の中には地検の判断を待つという意見もある」として、調査委の設置を保留。設置する際は、今年度から始まった「学校支援プロジェクト」の弁護士や臨床心理士らに調査を依頼する考えを示している。
 市教委の対応の背景には、当時の校長が10年7月16日付で学校に提出した報告書の存在がある。報告書は、教諭の行動について「足を払った」と記しただけで、暴行や体罰を否定。受理した市教委は当時、詳細な調査を行わずに「行き過ぎた指導」として処理した。市教委は「教諭が現在、『殴った』と認めているのなら即座に調査するが、そうした情報もない」と説明する。
 男児の両親は第三者から報告書を入手し、「事実と違う」と訂正請求を数回出したが、訂正されたのは男児と父親の年齢だけだった。また、報告書には事件翌日の職員朝の会で「力をもって制する指導は慎むよう指導した」と記載されたが、取材に対し、複数の職員が「指導は一切なかった。報告書があることも知らされていなかった」と証言。母親は「うそで固められた報告書。早く調査して訂正してほしい」と憤る。
 また、11年5月、教諭の1人が報告書を見せるよう校長に求めたところ、保管されていないことが判明したという。
 いまだに正式な謝罪がないことも両親の怒りを増幅させている。当時の校長が自宅を訪問し、教諭が書いた謝罪文を手渡した。しかし、宛名が両親や男児でなく元校長で、元校長へ謝罪する体裁だったため、両親が書き直しを求めたところ、元校長は謝罪文をポケットにしまって持ち帰ったという。その後、謝罪文は提出されていない。市教委もこの事実は確認しており、「謝罪文を両親に渡すよう指示した」とするが、元校長は毎日新聞の取材に「話すことはない」としている。
3月26日朝刊

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