破綻の道程:堀越学園解散/4 薬学部にも食指 さらに拡大志向 /群馬

破綻の道程:堀越学園解散/4 薬学部にも食指 さらに拡大志向 /群馬
毎日新聞 2013年4月2日(火)12時15分配信

 06年4月に開校した高崎医療技術福祉専門学校で、あてにしていた3億円の補助金が入らず、大きな痛手を負ったはずの学校法人堀越学園(高崎市)だが、拡大志向はさらに続いた。「創造学園大に新しく薬学部を作る。土地を用意してくれれば進出する。東洋医学にも大きな関心があり、漢方の研究発展も目指す計画だ」。06年9月25日、堀越哲二元理事長が長野県坂城(さかき)町の中沢一町長(当時)に伝え、薬学系大学の紹介サイトにも「学部開設予定大学」とリストアップされた。
   ◇  ◇
 坂城町と学園とのつながりは03年ごろから。堀越元理事長は譲り受けた高校(別法人)のある長野県松本市を頻繁に往復していた。同町に立ち寄った際、町が復活に取り組む辛みの強い特産品「ねずみ大根」の味に感激し、町内に畑を借りて学園の学生が栽培やPRに協力したことがきっかけだという。
 「テクノの町に学園機能が備われば、さらなる文化面での向上が図れる」。町は、八十二銀行(長野市)の経済研究所に薬学部誘致による波及効果の検討を依頼。学園に提供する土地として、オリンパスの工場跡地約4万7000平方メートルを、町土地開発公社が6億1000万円で購入した。
   ◇  ◇
 00年代前半、薬剤師は学生に人気の高い資格の一つで、全国各地で薬学系大学の新設計画が持ち上がっていた。栃木県足利市でも05年7月の市長会見で、競馬場跡地に看護・薬科系大学の計画があることを発表。当初計画は96億円で、うち40億円は県と市からの補助を見込んでいた。しかし、06年度から薬剤師の国家試験受験資格の在学年数が4年から6年に延長されたことで、薬学部の受験者が急減、各地の計画は一気にしぼんだ。
   ◇  ◇
 町は学園から「08年7月の申請に向けて、準備を進めている」と説明されていたが、一向に進む気配が感じられなかったという。08年5月28日、中沢町長は堀越元理事長に面会した。「文部科学省と厚生労働省の事前審査に向けた準備が、整いかねている。6年制になった薬学部を目指す子ども、特に女性が減少し、大きく様変わりした。国の助成制度も変わってきている」と答える堀越元理事長に、中沢町長が誘致断念を伝えた。
  ◇  ◇
 上信越自動車道の坂城インターに近い、薬学部予定地はその後、精密機械会社に売却され、現在は工場が稼働している。11年4月で町長を引退した中沢氏は、学園解散のニュースに「大学の進出に大きな期待を寄せたのは事実だが、この町で6年制大学に人が集まるのかと疑問を持った。断念を早く決断して良かった」と振り返った。【増田勝彦】=つづく
4月2日朝刊

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする