体罰:都内全公立校、目立つ指導力不足 昨年度146校で182人 /東京
毎日新聞 2013年5月24日(金)11時8分配信
都教委が23日公表した都内全公立校の体罰調査結果では、体罰をした教職員らの数が4月中間報告よりさらに増え、昨年度1年間で146校182人に上った。数十回に上る暴力など刑事罰に相当しそうな事案もある中で、当事者の教員への聞き取りでは指導力の不足や体罰への認識の甘さも浮かぶ。都教委は8月までに、有識者を交えた会合で体罰根絶に向けた対応策をまとめる方針だ。【和田浩幸】
調査結果によると、体罰が確認された146校は都内公立校全体(2184校)の6・7%に当たり、内訳は小学校30、中学校82、高校33、特別支援学校1。被害を受けた児童生徒は509人に上り、このうち▽骨折(2人)▽歯が欠ける(2人)▽鼓膜が破ける(2人)▽やけどなど(27人)▽内出血(10人)▽ねんざ(2人)−−など計59人が傷害を負わされた。
体罰の内容は「たたく」が最多の88人。「殴る蹴る」(28人)、「物で殴る」(11人)といった危険な行為もあった。体罰を加えた場面は、授業中など部活動以外が95人と過半数を占めた。
教職員には校長らが当時の認識を聞いているが「感情的になった」(65人)、「繰り返し言っても伝わらない」(49人)など、言葉での指導が不足していたケースが約6割を占めた。「体罰と思っていなかった」(32人)、「体罰以外考えられなかった」(8人)など、その瞬間は行為を正当化していた回答もあった。
都教委は「暴力は言語道断だが、まずはどこまでが指導でどこからが体罰なのか、明確な線を提示したい。部活動などでは子供の方が暴力を仕方ないと思っている場合もあるので、児童生徒の意識改革も図りたい」と話している。
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◆都教委が実例を公表した教職員による体罰の概要
◇小学校
▽指導で頭をたたこうとしたのを避けて床に倒れた児童の背中を蹴った=大田・大森東小
▽授業中に児童の頬を手の甲でたたき鼻血を出させた=板橋・中台小
▽授業中に木琴のばちで児童の頭をたたき、こぶを作った=板橋・若木小
▽授業中に児童の頬をたたき鼻血を出させた=板橋・加賀小
▽問題行動への指導で手のひらで頬をたたき、口の中を切った=練馬・大泉北小
▽給食中に宿題をしてこなかった児童の頭を殴り、反動で児童の前歯が1ミリ程度欠けた=足立・東伊興小
▽着替えの最中にふざけていた児童の肩を押して倒し、顔が床についたまま引きずって擦り傷を負わせた=町田・南成瀬小
▽児童7人に対し、指導で軽く手を握り頭をたたく体罰を複数回した=北・谷端小
◇中学校
▽生徒を振り向かせようとした際に馬乗りになり、頸椎(けいつい)のねんざなどの傷害を負わせた=台東・上野中
▽宿泊行事の最中、生徒6人を指導する際に頬をたたくなどし、1人を布団に押し倒して鎖骨を折る傷害を負わせた=台東・浅草中
▽卓球部の合宿中に携帯電話を持っていた生徒の頬を8回たたき、鼻血を出させた=江東・深川第七中
▽水泳の授業に遅れた生徒27人を炎天下のプールで正座させ、3人が足をやけどした=江東・第三砂町中
▽廊下に倒した生徒が抵抗したため、両膝で手を押さえつけ、人差し指を骨折させた=品川・伊藤学園
▽反省を示さない生徒の胸ぐらをつかんで壁にたたきつけるなどし、腕にあざができた=大田・大森第七中
▽野球部員に太ももを蹴るなどの体罰を7回した=足立・第十中
▽違反物を持ち込んだ生徒の顔をたたき、鼓膜を破った=葛飾・新宿中
▽けんかをしている生徒を壁に押さえつけ、頬を殴って口の中を切った=江戸川・二之江中
▽部活動中に漫画を読んでいた生徒の頬を30回以上たたき、鼓膜を傷つけた=江戸川・南葛西第二中
▽太ももを蹴ってきた生徒の頬をたたき、口の中を切った=江戸川・瑞江中
▽サッカー部員16人の頭をたたくなどして、1人が腹部を打撲した=江戸川・鹿骨中
▽柔道部員が危険な練習をしていたと勘違いし、肘を蹴って打撲の傷害を負わせた=江戸川・篠崎中
▽バスケットボール部員13人をたたくなどして、3人が口の中を切った=江戸川・小岩第一中
▽別の教員の指示に従わなかった生徒の頬をたたき、唇を切った=清瀬・清瀬第二中
▽修学旅行中に布団の中で菓子を食べていた生徒2人を蹴り、壁に頭を押さえつけた際に打撲の傷害を負わせた=西東京・柳沢中
▽外部指導員が、ボールを足で扱ったバレーボール部員の顔にボールを押し付け、転ばせた=江東・有明中
▽給食当番を忘れた生徒を柔道のような技で転ばせた。日直日誌を書き忘れて逃げる生徒に日誌を投げつけた=世田谷・瀬田中
▽練習試合で身が入っていなかったバスケットボール部員をたたくなどの体罰を約20回した=渋谷・松濤中
▽練習試合でミスしたバスケットボール部員の髪をつかんで倒す、蹴る、たたくなどの体罰を18回した=練馬・田柄中
▽練習試合でミスした野球部員の頭をバットの先端でたたくなどの体罰を14回した=江戸川・小松川第一中
▽ミスしたバレーボール部員に対し、のど元を押したり、ウサギ跳びをさせたりした=江戸川・小岩第二中
▽練習試合の際に昼食の遅かったバレーボール部員の足を蹴るなどの体罰を5回した=府中・府中第三中
◇都立高
▽ユニホームを洗わずに返却した野球部員5人の頬をたたき、口の中を切った=雪谷高
▽忘れ物をした生徒の頭を教務手帳でたたこうとして、鼻にぶつけて出血させた=松原高
▽授業態度の悪い生徒の頬をたたいて口の中を切った=練馬工業高
▽生徒を指導する際、部屋のドアを施錠して明かりを消したうえ、頭突きや携帯電話を折り曲げたりして、頸椎ねんざの傷害を負わせた=本所工業高
▽授業中に出ていこうとした生徒の頭をたたき、頭部打撲の傷害を負わせた。野球部顧問は合宿費用を返す際に態度が悪かった部員の頭をたたき、指導では「死ね」などの暴言を吐いた=松が谷高
▽道場の照明を消して的を射る練習をしていた弓道部員の頬をたたくなどした=日比谷高
▽生徒への指導で指導棒や物差しを使って尻や頭などをたたいた=工芸高
▽練習試合で集中していないバスケットボール部員の頭をたたくなどの体罰を7回した=片倉高
▽生徒に授業態度を注意する際、金網フェンスに押し付け足を掛けてよろつかせた=野津田高
▽試合に負けた野球部員36人に「罰走」と称して昼食も取らせず学校外を50周(約40キロ)走らせた=保谷高
▽ミーティングでサッカー部員にボールをぶつけたり、上半身を裸にさせ説教したりした。試合中に「川に落ちちまえ」「殺すぞ」などの暴言を吐いた=国分寺高
〔都内版〕
5月24日朝刊