川崎・中3自殺から3年、体験語り続ける両親/神奈川

川崎・中3自殺から3年、体験語り続ける両親/神奈川
カナロコ by 神奈川新聞 2013年6月7日(金)6時0分配信

 中学3年生だった篠原真矢(まさや)さん=当時(14)=が自ら命を絶ってから、7日で丸3年がたつ。「真矢が見限ったこの世界を変えなくてはならない」。わが子を失った苦しみと向き合いながら、父宏明さんと母真紀さんは遺族としての体験を語り続けている。

 2010年6月7日。真矢さんは「友達をいじめから守れなかった」と遺書を残し、自宅で自ら命を落とした。

 自身も、2年生の秋ごろから暴力を振るわれ、下着を脱がされるなどのいじめを受けた。親友がいじめに遭っていたことを見かねて止めに入ったことで、自分がターゲットになっていった。3年生に進級後、直接的ないじめはほぼなくなったが、加害生徒は次々と対象を変えてはいじめを繰り返していたという。

 「いじめは心の問題です。みにくい心を持った子どもに育ててしまったわれわれ大人にこそ、大きな責任があります」。1月に市内の校長166人を前にした講演で、宏明さんは静かに語り掛けた。

 夫婦は昨年秋から、いじめ問題に取り組むNPO法人ジェントルハートプロジェクトの理事として活動している。市内外に出向き、重ねた講演は10回近く。その都度、わが子を失った現実に直面しなければならない、酷な時間でもある。

 「黙って息子と向き合っていた方がきっと穏やかな日常を過ごせるでしょう」。宏明さんは言う。「でも私たちは、真矢が見限ったこの世界をどうしても変えなくてはならない責任を感じずにはいられないんです」

 今なお自ら死を選ぶ子どもたちが後を絶たないでいる。「私たち大人の無関心が子どもたちの苦しみの背景にあることに早く気が付かなければならない」。いじめは大人、社会がつくり出している問題だと強調する。

 真矢さんの死から「もう3年と言うべきか、まだ3年か…」。宏明さんには「6月7日」が遠い昔のようにも感じられる一方で、「いるはずの息子がいないつらさ」が日に日に増していっているという。

 だが幸い、大勢の仲間や真矢さんの友人に支えられ、孤独を感じたことはない。月命日には多くが自宅の扉を開き、息子をしのんでくれる。「私たちのつらさを自分のつらさに置き換えて考えようとしてくれる人たち」の存在が、前を向くエネルギーとなっている。

 講演の終わりに、必ず伝えている言葉がある。

 「子どもたちが、『また生まれてみたい』と思えるような世界をつくることが残された者にとっての使命だと信じています」

 真矢さんが望んだ「いじめのない世界」。苦しむ子どもたちが一人残らずいなくなるその日まで、息子の遺志を引き継いでいくと決めている。

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