バルサルタンめぐる臨床研究「結論に誤り」−京都府立医大が調査報告

バルサルタンめぐる臨床研究「結論に誤り」−京都府立医大が調査報告
医療介護CBニュース 2013年7月11日(木)23時34分配信

 製薬会社ノバルティスファーマの降圧剤「バルサルタン」の臨床研究に、同社の社員(当時)が関与していた利益相反問題について、同研究で中心となった松原弘明教授(同)が所属していた京都府立医科大は11日、「本臨床研究で提示された結論には誤りがあった可能性が高い」と結論付ける調査報告を公表した。松原元教授の論文の基となる臨床データの解析を担当した元社員のほか、複数の研究員がデータ操作に関与した疑いも浮上したが、元社員に対する聞き取り調査が行えなかったとして、「推測」との表現にとどまった。

 2008年8月から12年9月までに、松原元教授らの研究グループが発表した7本の論文では、バルサルタンについて、通常の降圧効果に加えて、脳卒中や狭心症などの心血管疾患の発生率を下げる効果があると結論付けている。

 だが、京都府立医科大が外部機関に委託したデータ検証の結果では、同大附属病院に登録された310症例のうち、カルテの閲覧が可能だった223症例について、解析データとカルテの数値を照合した結果、心血管疾患の発生の有無が一致しなかった症例が34症例あった。

 また、223症例で心疾患の発生率に関する解析を行ったところ、解析データでは発生が抑制されたが、カルテでは有意差は見られなかった。さらに、同研究に登録された医療施設の全3031症例について、医療機関の医師が入力したデータと解析データの数値を比較したところ、こちらも同様の結果だった。

 カルテの閲覧が可能だった223症例の解析データについて、同データとカルテの数値を入れ替えた上で、全3031症例を解析しても、有意差は変わらなかったことから、調査報告では、「京都府立医科大以外の登録施設での症例に関しても何らかのデータ操作が行われていた可能性が示唆される」とした。

 一方、元職員の聞き取り調査を行うため、同大がノバルティスファーマに協力を要請したところ、退職していることを理由に断られたとし、「聴取のめどは立っていない」としている。

 京都府立医科大では今後、患者からの問い合わせに対応する専用窓口を設置。吉川敏一学長らの給与を返納するほか、研究に関与した同大の研究員に対しては、厳正な処分を行うとした。【敦賀陽平】

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