(朝鮮日報日本語版) 70代の大学名誉教授、「失明」と称し保険金だまし取る
朝鮮日報日本語版 2013年8月1日(木)11時22分配信
昨年12月、ある保険会社のオフィスに「失明した」として保険金の支払いを求める顧客が訪れた。この顧客は、名門私立大学の名誉教授の称号を受けた70代の女性だった。女性は夫の助けを借りて杖をつきながらオフィスに入り、失明したことを示す診断書を提出し、保険金の支払いを請求した。診断書は女性の知人の医師が作成したものだった。
ところが、保険会社が「失明の有無について改めて確認する」と告げたところ、女性は「保険金の支払いを引き延ばそうというのか。マスコミにいる教え子に言いつけてやる」と大声を張り上げたという。別の総合病院で再び視力検査を行おうという保険会社の提案も拒否した。結局、女性は最高レベルの身体障害者として、16億ウォン(約1億3900万円)の保険金を受け取ることになり、オフィスを後にした。だが、建物の外に出た途端、女性が杖をつかず、ほかの人の助けも借りずに一人で歩いている様子を、保険会社の社員が目撃。不審に思った保険会社は今年3月、女性が保険金をだまし取った疑いがあるとして、ソウル麻浦警察署に告訴した。
警察の調べによると、女性は2006年、毎月の保険料が1000万ウォン(約87万円)程度の二つの終身保険に加入したという。約款によると、保険加入期間に障害を負った場合、障害のレベルに応じて保険金が支給されることになっていた。両目を失明したと主張した女性は最高額である16億ウォンを支給されることになった。
保険に加入した当時、女性の視力は正常だった。加入した翌年の07年、女性は失明の原因になり得る「加齢黄斑変性」と診断され、目の手術を受けた。だが、それから5年がたった昨年、女性は突然「目が見えない」として保険金の支払いを求めた。
警察は、女性が最小限の保険料を納めながら、最大限の保険金を受け取った点に着目している。約款によると、女性は満期まで計12億ウォン(約1億450万円)の保険料を納めなければならないが、このうち5億6000万ウォン(約4900万円)を納めれば、満期まで保険料を納めた場合と同程度のメリットを得られることになっている。女性が保険金を受け取る直前までに納めた保険料はちょうど5億6000万ウォンだった、と警察は説明した。
女性は16億ウォンの保険金を受け取ると、すぐに2人の息子に分け与え、息子たちはこの金で同じ保険会社の保険商品に加入していたことが、警察の捜査で分かった。警察は「女性の行動は、保険の約款や保険会社内部の事情をよく把握していなければできないことだ。ファイナンシャルプランナーが女性に対し、(保険金を)息子に分け与える上で有利な保険商品を勧めるなど、指南役を務めたとみられる」と語った。
女性による保険金詐欺の直接的な証拠は監視カメラの画像の中から見つかった。警察は、女性が一人で銀行を訪れて書類を作成するなど、日常生活に全く支障がない状況を捉えた監視カメラの画像を多く確保した。今年2月末には海外旅行に出掛け、ターミナル内を自由に歩く姿が、仁川国際空港の監視カメラに捉えられていた。
警察は女性に対し監視カメラの画像を突き付けたが、女性は「写っているのは確かに私だが、私は目が見えない」と主張しているという。警察はひとまず、女性が個人病院で受け取った診断書と監視カメラの画像を大学病院2カ所に送り、女性の実際の状態について鑑定を依頼した。これに対し、一方の病院は「判断が難しい」と返答したが、別の病院は「女性の視力は少なくとも0.1以上だ」と話した。警察は「女性が事情聴取に応じた際も、自分で椅子を引いて座り、普通にボールペンを持って署名するなど、失明したようには思えない行動を取っていた」と説明した。
警察は先月半ば、女性に対し逮捕状を請求したが、高齢という理由などで発行が認められなかった。警察はまず、指定した病院で失明の有無についての再検査を受けることに関し、女性から同意を得た状態だ。警察は今月半ばごろ、女性の検査結果が出るのを受け、再び逮捕状を請求する方針で、また失明したという診断書を作成した知人の医師や、ファイナンシャルプランナーを立件することも検討している、と説明した。
これに対し女性は「保険会社が示した基準に合わせて保険金を受け取ったため、法的には何ら問題はない。監視カメラの画像は、私が歩き慣れた場所を歩いている様子を捉えているため、自然に歩いているように見えるかもしれない」と話した。