<論文不正訴訟>「告発で評価低下」認める 仙台地裁判決
毎日新聞 2013年8月29日(木)19時48分配信
論文に不正があると告発されて名誉を傷つけられたとして、東北大の井上明久前学長が、日野秀逸・同大名誉教授らに1100万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が29日、仙台地裁であった。市川多美子裁判長は「論文に捏造(ねつぞう)、改ざんがあるとの印象を与え、(前学長の)社会的評価を低下させた」として、名誉教授らに110万円の支払いを命じた。名誉教授らが約2500万円を求めた反訴は棄却した。
大学関係者によると、同大学は前学長の論文について「研究不正対応ガイドライン」に基づく調査委員会で、4月から不正の有無を調査している。
判決によると、名誉教授らは、前学長が1996年と2007年に発表した金属ガラスに関する論文で捏造やデータ改ざんがあると09年に東北大に告発し、告発状をホームページで掲載した。市川裁判長は判決で、名誉教授らが指摘する論文不正について「直ちに捏造、改ざんがあるということはできない」としたうえで、「学術論争で決着を図るべきだ」との判断を示した。【山越峰一郎】