1人100万円クーポン要求 鹿児島県高教組「賃金削減の補填に…」
産経新聞 2013年10月3日(木)22時50分配信
鹿児島県高校教職員組合(野呂正和執行委員長、約550人)が、5月末の県と労働組合による賃金交渉会議で、給与削減の補填(ほてん)として、2万5千人の全職員に1人当たり100万円分の地域クーポン券支給を要求したことが分かった。県は「正式な要求ではない」と無視した。高教組は、3400万円を計上した県職員の上海研修に「税金の使い道として、ふさわしくない」と反対を表明したが、県民の目に触れない交渉では総額250億円もの給与補填を求めていた。(谷田智恒)
問題の会議は、国の要請に基づく職員給与のカットを論議する場として、5月28、29両日に開かれた。県総務部と、自治労傘下の県職員労働組合(県職労)や日教組傘下の高教組、鹿児島県教職員組合など4労組で構成する「県地方公務員労働組合協議会」(地労協)の幹部が出席した。
会議の中で高教組の野呂委員長は、平成16年度〜24年9月の9年間で、教員や警察官も含めた県職員の給与が平均約140万円を削減されたとの独自試算を提示した。その上で、削減分の一部返還として、全職員に1人当たり100万円の地域クーポン券を支給するよう求めた。
クーポン支給は、労組側が提出した要求書には記載されておらず、県は「職員団体としての正式な要求項目でない」として、無視し、回答しなかった。
地労協議長を務める杉本英俊・県職労執行委員長は「協議会として組織的に求めた提案でない。議論の中で野呂氏が発言したものであり、内容について特にコメントはない」と語った。
交渉は決裂し、鹿児島県は7月から来年3月まで、管理職8〜10%、一般職4〜6%の給与カットを実施した。県人事課によると、9カ月間の合計削減額は、1人平均19万円になるという。
県と労組が交渉した5月29日、鹿児島県は、鹿児島−上海路線の存続を理由に県職員、教職員計1千人の「上海研修」の必要経費1億1800万円を、6月補正予算案に計上した。伊藤祐一郎知事は6月14日の県議会で「職員の給与削減の一部を、研修という形で還元するのは必然的な流れ」と述べ、上海研修が給与補填と認めた。
高教組は6月9日、上海研修事業に対する県民の批判が高まる中、「税金の使い道としてふさわしくない」と、組合員に研修ボイコットを呼びかける方針を表明した。
他の労組に先駆けて反対表明を出すことで、県民向けにポーズを付けたが、労組内部にさえ「1人100万円ものクーポン券を求めた高教組は、県を批判できる立場にない」と冷ややかな声がある。
上海研修は結局、県民や県議会の猛反発を受け、規模を1千人から300人に縮小し、予算額も計3400万円で実行した。
高教組の野呂委員長は取材に対し、事務局を通じて「産経新聞の取材には答えられない。拒否する」とコメントした。
総務省が、全国の都道府県を財政の健全度に従ってランク分けした平成23年度都道府県財政指数表では、鹿児島県は岩手、秋田両県などとともに、最下位のEグループに位置付けられた。鹿児島県財政課によると、退職金も含めた全職員にかかるコストは、2278億円(23年度)で全コストの33%を占める。
伊藤祐一郎知事は上海研修旅行を職員にプレゼントし、高教組はクーポン券を要求した。県財政を考えれば、職員の給与補填をしている場合ではない。