大津中2自殺 第三者委報告書の7割をHPから削除「公開続けるべき」

大津中2自殺 第三者委報告書の7割をHPから削除「公開続けるべき」
産経新聞 2013年10月10日(木)13時30分配信

 大津市立中2年の男子生徒が自殺した問題で、実態解明に当たった第三者調査委員会の報告書をホームページ(HP)上で公開してきた大津市が、その大部分を削除していたことが9日、分かった。報告書は、遺族推薦の委員人選など全国で深刻な問題となっているいじめの調査で「大津モデル」と評価された第三者委の成果だった。11日に男子生徒の2回目の命日を迎えるが、専門家は「削除は大津モデルの浸透を妨げる」と批判している。

 大津市の第三者委は、平成24年8月に設置。生徒が通っていた学校の在校生や教職員、遺族ら延べ56人から聞き取りを行い、「いじめが自殺につながる直接的要因になった」と結論づけた調査報告書を今年1月、市に提出した。

 報告書は全231ページで、「自死に至るまでの事実」「事後対応」「提言」の3部構成。市は市役所で公開するとともに4月からはHPでもほぼ全文を掲載した。しかし、アクセス数の減少などを理由に、全体の7割以上に当たる1部と2部の計167ページ分をHP上から削除した。

 1部には、生徒の学校、クラスの状況や同級生らの行為、自殺に至る原因の考察などを記述。2部では、自殺後の学校や市教委の問題点などをまとめていた。

 同市の越直美市長は報告書の成果を受け、外部有識者による第三者委設置の重要性を訴えてきた。東京都足立区立中3年の男子生徒が22年10月に自殺した問題では、第三者委が大津の報告書をHPで閲覧し、調査手法や報告書の構成を参考にしたという。

 さらに、「いじめ防止対策推進法」が今年9月に施行されて以降、全国の自治体などから報告書の送付の請求が相次いでいる。

 報告書の削除について、市は「アクセス数が減少するなどHP上での公開は一定の役割を終えた。ただ、第3部は、他の自治体や学校などが指針をつくる際に参考にしてもらえる重要部分だと考えており、引き続きHP上で公開している」とし「全編は市役所内で閲覧できる」と説明するが、情報公開の姿勢が大きく後退した印象は否めない。

 同市の第三者委で委員を務めた教育評論家の尾木直樹氏は「削除された1部と2部が、結論に至る詳細な調査経過を反映しており、大津モデルのいわば『肝』部分。他の第三者調査機関が参考にするためにも、公開を続けるべきだ」と指摘している。

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