相次ぐ被告匿名裁判、性犯罪で今年3件
下野新聞 2013年10月21日 朝刊
宇都宮地裁が性犯罪などの刑事裁判で被告名などを秘匿する決定を出すケースが、今年に入り相次いでいる。
地裁に秘匿を申し入れた宇都宮地検は「秘匿はあくまで例外」としながらも、被害者保護の観点から必要性を訴える。地裁は「刑事訴訟法の条文に従って適切に判断した」と説明するが、具体的な判断基準などは明らかにしておらず、専門家は「秘匿決定のルール作りが必要」と指摘している。
地裁は8月以降、教え子の女子生徒にみだらな行為をしたとして児童福祉法違反罪に問われた元教諭と、娘や養女に乱暴したとして強姦罪に問われた男2人の公判で被告を匿名にして審理した。
3件はいずれも地検が被害者の要望に基づいて秘匿を申し入れ、弁護側も了承し地裁が決定した。公判では検察、弁護側ともに被告名や住所、生年月日、職場など被害者が特定される恐れがある事項に触れずに審理を進めた。
被害者特定事項の秘匿は2007年の刑訴法の改正で可能になった。地検は、で佐賀地裁が教諭の実名を伏せたことを参考に、8月の児童福祉法違反事件で初めて被告人の氏名を含めた秘匿要請を行ったという。
地裁が秘匿決定した3件はいずれも事実関係に争いが無かった。しかし、争いがある場合に秘匿決定が出されると、被告側が反対尋問で被害者側への具体的な反論ができなくなるなど被告の「防御権」が侵害される懸念もある。