<障害児への暴行>「体罰」と認定 第三者委が結論 奈良
毎日新聞 2013年11月6日(水)15時2分配信
奈良市立小学校の特別支援学級で2010年5月、当時、5年生だった発達障害の男児(14)=同市=が元担任の男性教諭から暴行を受けたとされる問題で、市教委が設置した第三者調査委員会が、暴行を認め体罰にあたると結論づけたことが6日、分かった。市教委と学校は「行き過ぎた指導で、体罰ではない」としていた。教諭以外から事実確認をしなかった当時の校長らについて、調査委は調査が不十分だったと指摘し、隠蔽(いんぺい)の疑いがあるとも批判している。発生から約3年半、体罰と訴え続けた両親の思いが届いた形だ。
この問題を巡っては、男児の両親からの被害届を受け、奈良署が今年3月、教諭を暴行容疑で書類送検。容疑は10年5月10日午前10時45分ごろ、教室で男児の態度を注意した際、男児が教諭の顔を払いのけたことに腹を立て、男児の顔を手で1回殴り、足のすね付近を1回蹴ったとされる。
奈良地検は4月、「事実関係は認められる」としたが、起訴猶予処分にした。理由の説明を受けた両親によると、公判になった際の児童の心理的負担に配慮したとみられる。
一方、送検を受けて奈良市長が調査委の設立を指示。弁護士や大学教授ら有識者5人で6月に発足し、14回にわたって会合を開き、児童と教諭を含む10人から事情聴取した。その結果、体罰と認定した報告書をまとめ、市教委に7日、提出することになった。
報告書によると、教諭は「少なくとも児童の頬に手を当て、右足で児童の左足を止めた」として、「パニック状態に陥っている児童の動きを相当強い力で制約していたこと自体、肉体的苦痛を与えるようなものだ」と指摘。「体罰と十分評価できる」と認定した。
さらに問題が発覚した後、元校長らが教諭から話を聞いただけだった点について「目撃者や児童から聞き取り調査し、証拠化しておくことが必要だったのに、その他の調査を怠った。学校管理職が結果として事件を隠蔽したと疑われてもやむを得ない」と指弾。また、元校長らの報告を信用するだけで、児童から直接聞き取り調査をしていない市教委に対しても「基本的な対応に重要な問題があった」と非難している。
児童の両親は「ようやく真実が見えてきた。教諭や元校長、市教委は報告書を真摯(しんし)に受け止め、子供が大事にされる教育環境を整えてほしい」と話した。【伊澤拓也】