大和・プールで園児溺死、元担任に罰金50万求刑/横浜地裁
カナロコ by 神奈川新聞 2014年2月26日(水)0時15分配信
大和市の私立幼稚園の屋内プールで2011年7月、園児の伊礼貴弘ちゃん=当時(3)=が溺死した事故で、業務上過失致死の罪に問われた当時の担任教諭平有紀江被告(23)=相模原市南区=の論告求刑公判が25日、横浜地裁(毛利晴光裁判長)で開かれ、検察側は「幼稚園教諭として基本的な注意義務を果たさなかった過失は重い」として罰金50万円を求刑した。判決は3月24日。
検察側は論告で「無限の将来性を秘めた幼い生命を奪った結果は重大」と指摘。弁護側は「新人教諭としてできる限りの注意を払っており、園の安全管理態勢に大きな不備があった」などと情状酌量を求めた。
論告に先立つ被告人質問で、平被告は「たっくん(貴弘ちゃん)を助け出すことができず、本当に申し訳なく思っています」と声を震わせて謝罪した。
被害者参加制度を利用して貴弘ちゃんの両親が意見陳述し、父康弘さん(39)は「被告が本当に反省しているとは思えない」と厳罰を要求。弁護側の最終弁論では、陳述内容に激高し弁護側に詰め寄ったため、裁判長から退廷を命じられた。
起訴状によると、被告は11年7月、園内の屋内プールで園児らに水遊びさせた際、行動監視を怠り、プール内で溺れた貴弘ちゃんを死亡させた、とされる。この事故では、当時園長だった西山淳子被告(66)も同罪で在宅起訴されている。
◆「記憶消えるのつらい」両親陳述
「時間がたつにつれて、自分の中に残っていた貴弘の匂いが、声が、感触が、消えていくのがつらい」。被害者参加制度を利用して意見陳述した伊礼貴弘ちゃんの父康弘さんは、高ぶる感情を押し殺し、声を絞り出した。
最愛の息子がいない生活は夫婦にとって「地獄の日々」。貴弘ちゃんが大好きだった新幹線での家族旅行をキャンセルし、代わりに墓地や墓石を選んだ。苦しみにゆがむ貴弘ちゃんの顔が頭に浮かび、同世代の親子連れを見ればうっとうしく感じるようになった。
母利奈さん(39)も意見陳述に立ち、「今まで一緒にいたことを、思い出にしたくない」とかすれた声を法廷内に響かせた。通園時には野の花を摘んでプレゼントしてくれる母思いの優しい子だった。思春期にはけんかをし、成人式にはお酒で乾杯する−。そんな平凡な夢さえ奪われてしまった。「今でも、早く悪夢がさめないかと思うことがある」
被告人質問で平被告は謝罪しながらも、安全管理や注意事項については「園から具体的な指導はなかった」と繰り返した。利奈さんは肩を震わせながら、被告に突き付けるように言葉を向けた。「反省や責任感のなさに、一生許せなくなった」
足元の一点を見つめ、時折目元を拭うようなしぐさをみせていた平被告。証言台の両親と視線が交わることは最後までなかった。