<学校体育館耐震化>窓に盲点…枠ごと落下例も 補強対策へ

<学校体育館耐震化>窓に盲点…枠ごと落下例も 補強対策へ
毎日新聞 2014年3月16日(日)7時30分配信

 全国の学校体育館で東日本大震災時の窓ガラス被害が220件確認され、このうち126件が耐震化済みの建物だったことが、文部科学省の調査で分かった。窓枠ごと落下し、人を直撃すれば命にかかわる被害も34件あり、うち22件が耐震化済みの建物で起きていた。同省は体育館が震災時に避難所となることも踏まえ、耐震化とは別に集中的な補強対策を実施する方針を固めた。

 震災を受けて文科省は2012年5月に有識者会議を設け、天井や窓など、建物の構造上の強度に直接関係のない非構造部材の耐震対策を検討。落下の危険があるつり天井は昨年夏に原則撤去の方針を決めている。

 会議で近く了承される報告書案によると、窓ガラス被害220件の内訳は、▽窓枠ごと落下34件▽可動サッシの割れ142件▽固定窓の割れ44件。窓枠ごと落下した危険なケースのうち21件を分析したところ、2階部分が壁面から屋外へ0.5〜1.5メートル張り出した「片持ち構造」の建物が17件に上り、被害が集中していた。

 体育館の構造別で比較すると、鉄筋コンクリート造りの1階部分に鉄骨造りの2階を乗せる複合型で被害が大きい傾向があった。

 文科省は学校施設の耐震化を進めており、昨年4月時点で公立小中学校(校舎や体育館)の耐震化率は88.9%になった。だが、東日本大震災で窓ガラス落下は耐震化の有無とは関係なく発生し、別途対策を進める必要性が浮上した。

 報告書案は、非構造部材のうち、つり天井などに加え「片持ち構造」を「緊急性をもって優先的に対策を講じるべきもの」に選定。早急な実態把握や、柱やはりの補強対策が必要だと指摘し、新・増築の場合は「片持ち構造」を設けないことも含めた耐震設計が必要としている。

 同省は、有識者会議の指摘を新・増築時の設計に生かし、既存建物も補強するよう全国の教育委員会などに今年中に通知する。

 体育館の窓ガラス落下は、避難所となった後の余震の際にも避難者を傷つける危険性が高い。同省は報告書を受け、耐震化ガイドブックを全面的に改訂するほか、学校施設整備指針も見直す。対策費用は大規模改修に対する補助制度で対応し、3分の1を国費で補助する。【福田隆】

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