関西の公立学校 教員が選挙で校内人事 校長の権限が形骸化

関西の公立学校 教員が選挙で校内人事 校長の権限が形骸化
産経新聞 2014年4月22日(火)7時55分配信

 大阪や兵庫、滋賀の公立学校で教務主任などの校内人事を教員が選挙などで決めていたことが相次いで発覚した。学校教育法上は校長が持つとされる人事権が形骸化しており、各教育委員会が実態解明や是正に乗り出している。

 大阪市生野区の市立中学校では教務主任などを選挙で決めるとする規定を設けていた。教員らによる「選挙管理委員会」の設置方法に加え、選挙の実施時期まで詳細に記載されている。

 規定は記録上、遅くとも昭和52年から存在。平成24年まで実際に選挙が行われ、校長は選挙結果に基づき任命していたとされる。25年に同校に着任した民間出身の校長が規定を問題視。今月、表面化した。

 神戸市でも市立高5校で選挙を実施しており、滋賀県でも県立高など9校で選挙が行われていたことが発覚した。

 また大阪府立高138校のうち約6割が25年2月時点で、校内人事の原案を教員が作成する「校内委員会」を設置していたことも判明した。

 複数の大阪市立学校では教員が人事委員会を作り、人事権を掌握。委員長の教員が全教員を集めて“辞令発令”し、人事委の内示に不満を持った教員をなだめ、説得する役を校長が担っていた。校長側にも「学校運営がスムーズになる」との思惑があり、不適切な人事規定は今も存続している。

 同市南部の中学校では数年前、校長室に校長や教頭、教員数人の人事委員会メンバーが集合し、教頭が全教員から人事の希望を聞き取って作成した一覧表をもとに人事を固めた。

 人事委メンバーが各教員に内示、教員が不服を申し立てた際の説得役はやはり校長だった。全員の了承を得た段階で人事委員長の教員が“辞令”を発表。当時の校長は産経新聞の取材に「みんなで決める方がスムーズで、問題があるとは思わなかった」と回答した。

 一方、別の中学校で人事委の廃止に踏み切った元校長の男性は一連の校内人事について「教員という仕事の特殊性だと思う」と指摘。その上で「子供に『一人一人の意見が大事』と教えている環境の中で校長の指示通りになるのは『違う』と感じ、教員による人事が『民主的だ』と思ってしまう」と解説する。

 下村博文文部科学相は今月16日の文科委員会で大阪市立中学校での選挙を踏まえ、全国的な調査に乗り出す姿勢を示している。

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教員が教員に辞令!? 不可思議な教育現場…校長「スムーズになるなら」
産経新聞 2014年4月22日(火)13時0分配信

 各地の公立学校で教務主任などの校内人事を教員選挙などで決めていた問題で、複数の大阪市立学校で教員が人事委員会を作り、人事権を掌握していたことが21日、関係者への取材で分かった。委員長の教員が全教員を集めて“辞令発令”。人事委の内示に不満を持った教員をなだめ、説得する役を校長が担う例もあった。校長側にも「学校運営がスムーズになる」との思惑があり、不適切な人事規定は存続している。

 市南部の中学校の校長室で数年前、校長や教頭、教員数人の人事委員会メンバーが集まった。机上には教頭が全教員から人事の希望を聞き取り、作成していた一覧表が置かれていた。この表をたたき台にして、人事を固めた。

 人事委メンバーが各教員に内示し、教員が不服を申し立てた際の説得役は校長だった。全員の了承を得た段階で人事委員長の教員が全教員を集め、“辞令”を発表していた。

 当時の校長は産経新聞の取材に「みんなで決める方がスムーズで、私は助かっていた。問題があるとは思わなかった」と回答。同校によると、人事規定は今も残っており、昨年度も運用されたという。

 生野区の中学校では選挙で人事が決まっていたことが既に判明しているが、別の中学校でも同様の規定が存在。同校は市教委に報告しているが、教頭は「自分は4月に着任したばかりで規定が運用されているか分からない。校長は終日、不在」と答えた。

 約10年前の4月、市東部にある中学校に校長として赴任した男性は、校長以外で作る人事委から人事案を“付与”される実態にあぜんとしたという。この男性が着任したとき、前任者が人事案通りに教員を説得しきれず、空席になっているポストがあった。男性は人事案に従って校長が説得に奔走する事態に違和感を覚えたが、何よりも人事内容自体に驚かされた。

 「適材適所ではなく、教員一人一人のエゴが入っていた」

 男性は11月ごろ、この仕組みを廃止して、校長自らが全教員から意見を聞いて人事案を決めることを職員会議に提案。採決の結果、僅差で了承された。

 翌年度の人事案を作り上げた直後には「もしも反対されたら、4月の入学式で担任が決まっていない状況になってもいい」と覚悟したが、全教員が人事を受け入れたという。

 市教委は、規定がある学校には規定書の提出や運用実態の申告を求めており、不適切な規定は廃止を指示していく。橋下徹市長は「校長が人事権を行使できるよう管理運営規則を作ればいい」と主張しており、22日には校内人事を含む学校運営について教育委員と協議する予定だ。

 人事委の廃止に踏み切った元校長の男性は一連の校内人事について「教員という仕事の特殊性だと思う」と言い、こう解説した。

 「子供に『一人一人の意見が大事』と教えている環境の中で校長の指示通りになるのは『違う』と感じ、教員による人事が『民主的だ』と思ってしまう」

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