(朝鮮日報日本語版) 旅客船沈没:全教組、檀園高校生徒を扇動か

(朝鮮日報日本語版) 旅客船沈没:全教組、檀園高校生徒を扇動か
朝鮮日報日本語版 2014年5月8日(木)11時53分配信

 全国教職員労働組合(全教組)が、旅客船「セウォル号」沈没事故で犠牲になった檀園高校(京畿道安山市)の生徒たちを、民主化運動で犠牲になった金朱烈(キム・ジュヨル)氏や朴鍾哲(パク・チョンチョル)氏に例える動画をウェブサイトに掲載し、論議を呼んでいる。またこの動画では、全国民が犠牲者たちを悼み、潜水要員たちがあらゆる悪条件の下で命懸けの捜索活動を行っている状況にもかかわらず「君たちが江南(ソウル市江南地区)の裕福な親の下に生まれていたら、こんなに救助が遅れただろうか」といった扇動的な表現をしている。

 全教組は先月29日、江原支部の元支部長で詩人でもある中学校教諭が書いた「中身のない国を去った君たちへ」と題する追悼詩を、5分42秒間の「セウォル号追悼動画」として編集し、ウェブサイトの広報資料コーナーに掲載した。

 この動画は「君たちはひょっとしたら、行方不明になってから27日後、頭や目に催涙弾が刺さった凄惨(せいさん)な遺体となって馬山中央埠頭(ふとう)に浮いていた17歳の金朱烈なのかもしれない。これは李承晩(イ・スンマン)政権が犯した殺人だった」「君たちはひょっとしたら、治安本部対共捜査団の南営洞分室で髪の毛をつかまれ、何ら抵抗もできないまま浴槽の水に漬けられ死んでいった朴鍾哲なのかもしれない。これは全斗煥(チョン・ドゥファン)政権が犯した殺人だった」と表現し、檀園高校の生徒たちを金朱烈氏や朴鍾哲氏に例えている。

 金朱烈氏は馬山商業高校1年生だった1960年、当時の自由党政権による不正選挙を非難するデモに参加し、行方不明になった後、催涙弾を浴びて死亡した状態で発見され、4・19革命(李承晩大統領の下野)のきっかけとなった。また、朴鍾哲氏はソウル大学言語学科に在学していた87年、公安当局による拷問で死亡し、6月民主抗争の導火線となった。

 全教組の追悼動画はまた「旅客船を運航できる船齢を30年まで延長し、日本で引退した老朽船を購入させ、小規模な船会社や漁船を保護するという大義名分の下、いい加減な安全点検で大企業の参入を容易にし、4大河川(漢江・洛東江・錦江・栄山江)での水遊び(再生事業)で山河を破壊したのは李明博(イ・ミョンバク)政権だった」と主張した。
 さらに「君たちが江南に住む裕福な親の下に生まれていたら、こんなに救助が遅れただろうか。君たちの中の誰かが大臣の息子や娘だったら、どうか助けてくれと訴える人たちを従北派(北朝鮮に追従)と決め付けるだろうか。食事が喉を通らず、夜も眠れずに叫び続ける母親たちを『騒ぎ屋』と決め付けるだろうか」と表現した。

 また「政権与党の国会議員たちが暴言合戦を繰り広げる国、君たちの生死を単なる記念写真の被写体にする国、いや、もうすでに国家ではない」「肘掛けいすに座ってカップラーメンを食うような者が教育部(省に相当)長官に就く国、ラーメンに卵を入れないで食べたといって残念がるような者がこの国の操舵(そうだ)室のスポークスマンをしている国、いや、君たちを主人公にできるような国ではない」と表現し「だからこれは、朴槿恵(パク・クンヘ)政権の無能による他殺だ」と主張した。

 このほか、政府がスパイでっち上げ事件をごまかすためにセウォル号事件を利用したというニュアンスも含まれている。「君たちが済州に向かって出港した日、この国の国家情報院長と大統領は、スパイでっち上げ事件について国民に謝罪した。深々と頭を下げて。どれだけ自尊心が傷ついたことだろうか。だから、セウォル号事故の騒ぎを大きくしようとしたのだろうか」という表現も見られる。

 全教組が追悼動画として編集した追悼詩は今月1日、全国民主労働組合総連盟(民主労総)がソウル駅で開催した「2014春季労働節(メーデー)大会」でも朗読された。

 この動画について、全教組の関係者は「江原道に住む教諭兼詩人の書いた追悼詩が、インターネット上で共感を得ているので、これを共有するため動画を制作し、掲載したものだ。全教組が何かを主張するために掲載したのではない」と語った。同関係者はまた「セウォル号沈没事件の犠牲者たちと金朱烈、朴鍾哲両氏は、時代を最もよく反映する犠牲者という点で、詩人が比較の対象したのであり、問題はないと思う」と話した。

 だが、全教組がこのような内容の追悼詩を動画として編集し、公式ウェブサイトに掲載したのは、セウォル号沈没事件を政治的な目的に利用するものではないか、と批判する声も出ている。ソウル市内のある教員は「子どもたちがこの動画を見たら、あたかも檀園高校の犠牲者たちが、金朱烈、朴鍾哲両氏のように現政権の公権力によって殺されたのだと受け止める恐れがある。政府が不十分な初動対応のため、生徒たちを救出できなかった点などは批判されて当然だが、だからといって教員団体がこのように政治的色彩の強い動画を制作し、ウェブサイトに掲載するというのは危険な発想だ」と指摘した。

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