いじめ自殺生徒の父、親も一緒に悩ませて…広島
読売新聞 2014年05月09日 13時45分
いじめを受けていた広島県廿日市市立中学3年の女子生徒(当時14歳)が自殺してから8日で1年を迎えた。
生徒が通っていた中学校では生徒会主催の集会が行われ、女子生徒の父親(46)は、生徒たちに向け、「悩み事があればためらわず、親に相談してほしい」と訴えた。
「この日が近づくのがつらかった。いじめに関わった子どもたちは進学し、やり場のない思いが残っている」。女子生徒の母親(44)はこの日、自宅で涙ぐみながら話した。学校からは3月に卒業証書が贈られたが、「娘の身に起きたことはまだ全部分かっていない」との思いもあり、心の整理はついていないという。
市教委の調査委員会の報告書によると、女子生徒は2年の1学期頃から部活動内で複数の生徒から悪口や無視、仲間はずれなどのいじめを受け、昨年5月7日、自宅で自殺を図り、翌日に死亡した。報告書は「いじめが自殺に至る精神的苦痛の誘因となった」とした上で、女子生徒から相談を受けていた教諭や学校の体制が不十分だったとした。
いじめ対策を巡っては、昨年9月にいじめ防止対策推進法が施行され、学校ごとに複数の教職員や心理、福祉の専門家らで構成する組織を置く▽教育委員会は必要な場合、加害生徒に出席停止などの措置を活用する――ことなどが求められるようになった。
これらに加えて、市教委は報告書の提言に沿った対策として、いじめ問題に対応する「いじめ対策グループ」を設置した。メンバーは警察OBや教員経験者ら4人で、学校にアドバイスをしたり、対応が適切か検証したりする。いじめが見つかった場合、学校には従来の月1回の定期報告の際ではなく、即時の報告を求めており、6月には、いじめが起きた場合の具体的な対応を学ぶ研修も実施する予定だ。
女子生徒の死から1年となった8日、市内の小中学校では命の大切さを考える授業や集会が行われ、女子生徒が通っていた中学校の集会には、生徒や保護者ら約450人が参加した。
女子生徒の父親は集会で、生徒たちに「親に悩みを相談して、親も一緒に悩ませてほしい。解決にならなかったとしても、親は一番の味方。娘が出来なかったことだからこそ、皆さんに伝えたい」と話し、保護者たちには「あまり話したがらない娘のことを気にして、学校に頻繁に相談しなかったことを悔やんでいる。皆さんには同じ思いをしてほしくない」と訴えた。
集会後、父親は「集会に参加した生徒さんの真剣な目を見て、先生たちの努力を感じたが、これからばかりを見るのではなく、娘に起きたことにしっかり向き合うことから始めてほしい」と話した。(山本美菜子)