<石綿調査>65校園で見逃し NPO「氷山の一角」
毎日新聞 2014年10月27日 7時20分配信
文部科学省の指示に基づき、全国の学校や幼稚園の建物で発がん物質のアスベスト(石綿)の有無を調査したはずなのに、少なくとも65校園で見逃されていたことがNPO東京労働安全衛生センター(東京都江東区)の調べで分かった。同センターなどは「氷山の一角に過ぎない」として国土交通省が新設した調査資格制度を活用し、計画的に除去するように文科省に求めている。
学校の教室や体育館では吸音や耐火の目的で石綿を吹き付けた建材が使用された。1987年、旧文部省が全国の教育委員会に調査を指示、30校に1校の割合で石綿を使った建材が見つかり、順次、改修した。石綿による健康被害が社会問題化した2005年にも文科省が公立学校などを実態調査。約1%で飛散の恐れがあることが判明した。
同センターは08年以降、新聞などで見落としが報道されたケースを集計。東京、神奈川、大阪など13都道府県の小学41校、中学10校、高校8校、特別支援学校など3校、幼稚園3園の65件だった。順次、除去などの対策がとられている。
同センターの分析によると、近隣校で見つかったことを機に行った調査で発見されるケースが8割を占め、耐震工事など改修の際に気付いたのが2割だった。見逃し原因の多くは、学校園や教委の職員らの知識不足とみられる。石綿を吹き付けた建材は一般には見分けがつきにくいという。外部委託の分析が不十分だったと推定されるケースも12%あった。
同センターや患者団体「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」などは、文科省に▽2013年に創設された資格「建築物石綿含有建材調査者」の活用▽危険性の高い石綿から計画的に除去−−などを要望した。
同センターの作業環境測定士の外山尚紀さんは「石綿対策に熱心な地域で見逃しが見つかる傾向があり、全国的にはもっとあるだろう。学校は部屋が多く増改築を繰り返すため、調査が難しい。国の支援で専門家による調査を実施すべきだ」と指摘している。
文部科学省は「見落としはあってはならないが、露出していない場所では発見後に改修すれば健康問題はないと考える。引き続き調査の手助けとなる通知を出す」としている。
学校で石綿が飛散した事例は、神奈川県の綾瀬市立綾瀬小(11年)や大阪府立金岡高校(12年)などがある。これとは別に、学校で石綿を吸って中皮腫になったとして小中学校などの教諭4人が公務災害認定を受けた。【大島秀利】